追放された搾りカス聖女は、第二の人生を謳歌する。なのに、激重騎士隊長が放してくれません! なんであんたぁ、ここにいるんだべ!?
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私はもう、倒れる寸前だった。
神殿の祭壇の前に、神官長、第二聖女や他の聖女達が並んでいる。
白髪頭の初老の神官長は、鋭い眼光をこちらに向けた。
「第一聖女、コレット・ブラウン。魔力を失ったそなたを追放する! しかも、そなたは自分の仕事を全て、第二聖女や、他の聖女達に押し付けていたそうだな。聖女としてあるまじき行いだ。恥をしれ!」
第二聖女ベルニカは、神官長の横でこちらを見てほくそ笑んでいた。ベルニカに田舎者と罵られ、仕事を押し付けられていたのは、私の方なのに。
「何か反論はあるか、聖女コレット」
「……いいえ、何もございません……。……長い間、お世話になりました」
私はこれだけ言い、一礼すると礼拝堂を後にした。
ふらふらする足取りで、神殿の広い廊下を歩いていく。
私は十三歳の時に、この神殿にやってきた。それから毎日のようにお祈りを捧げ、魔物よけの結界を維持し、その他の雑務に追われてきた。
……来る日も来る日も、朝から晩まで六年間も、馬車馬の如く。
もう、魔力は残っていない。根こそぎ搾り取られた。搾りカスだ。
そして……ついに、この時がやって来た。
「……ふっふっふっ、やっと……解放されっべ……」
ほっと安堵の笑みを浮かべたその時、頭がくらっとして倒れそうになる。
「――ブラウン殿!?」
背中をしっかりと支えられたので見上げると、ロヴァルト様だった。
「ロヴァルト様!? ……ありがとうございます……。大丈夫です」
助けてくれたロヴァルト様に笑顔を見せる。
彼は王都騎士団神殿専属部隊の隊長、ガルド・ロヴァルト様だ。神殿の警護の他に、私の護衛などを務めてくれた。
短めの赤茶色の髪に、大柄でがっちりと鍛えられた身体。
寡黙な人なので、私はあまり会話をしたことがない。
それに、いつも怖い顔で睨んでくる。きっと私のことが嫌いなのかもしれない。
それでも、お世話になっていたので最後の挨拶は必要だろう。
「ご存知だと思いますが、私は今日を以て神殿を出ることになりました。今までお世話になりました。ありがとうございました」
私が微笑みながら挨拶すると、ロヴァルト様の顔が一層険しくなった。
「……はい」
ロヴァルト様はそれだけ言って押し黙ってしまう。
(……会話が続かない……)
「……えっと、それでは、さようなら。お元気で……」
私が一礼して、歩き出すと後ろから微かに声がしたような気がした。振り返るが、ロヴァルト様は顔を逸らしている。……気のせいだったようだ。
私は再び歩みを進め、その場から遠ざかる。
「……ブラウン殿……」
そんな呟きは聞こえなかった。
◇ ◇ ◇
「じぃちゃん、帰ったよ〜」
少ない荷物を抱えて、私は田舎のクレイ村に戻ってきた。ここは私の故郷で、十二歳まで育った場所だ。
「おおう、コレット! よく戻ったべな。ちょっと見ねぇうちに大きくなったべ」
「じぃちゃんも、元気そうで安心したよ〜」
テリーじぃちゃんは私に気付くと、畑作業の手を止めた。野良仕事中のじぃちゃんはまだまだ現役バリバリだ。
「採れたてのトマトがあっべ。コレット、好きじゃろ?」
「うん、やった! 食う食う!」
緑の広がる大地。遠くに見える山々。どこまでも深い青空に、流れる白い雲。
吹き抜ける風が私の茶色の髪を揺らし、私は大きく息を吸った。
「やったぁ、戻ったべーー!」
私が畑の真ん中で叫んでいると、じぃちゃんは苦笑いをする。
「ほらほら、コレットや。はよぉ、家さ戻るべ」
「あ、うん!」
私はじぃちゃんに促され、久しぶりの我が家に向かうのだった。
『コレット、これやっておきなさいよ! あなたみたいな田舎者が第一聖女だなんて、認めませんわ!』
ベルニカが私に紙の束を投げつける。辺りには、書類の山、山。各地の報告書や、嘆願書まで。
(ひっ、これって、神殿の事務仕事だべ。……いや……っ、もう、いやじゃーーっ)
神殿の祭壇の前に、神官長、第二聖女や他の聖女達が並んでいる。
白髪頭の初老の神官長は、鋭い眼光をこちらに向けた。
「第一聖女、コレット・ブラウン。魔力を失ったそなたを追放する! しかも、そなたは自分の仕事を全て、第二聖女や、他の聖女達に押し付けていたそうだな。聖女としてあるまじき行いだ。恥をしれ!」
第二聖女ベルニカは、神官長の横でこちらを見てほくそ笑んでいた。ベルニカに田舎者と罵られ、仕事を押し付けられていたのは、私の方なのに。
「何か反論はあるか、聖女コレット」
「……いいえ、何もございません……。……長い間、お世話になりました」
私はこれだけ言い、一礼すると礼拝堂を後にした。
ふらふらする足取りで、神殿の広い廊下を歩いていく。
私は十三歳の時に、この神殿にやってきた。それから毎日のようにお祈りを捧げ、魔物よけの結界を維持し、その他の雑務に追われてきた。
……来る日も来る日も、朝から晩まで六年間も、馬車馬の如く。
もう、魔力は残っていない。根こそぎ搾り取られた。搾りカスだ。
そして……ついに、この時がやって来た。
「……ふっふっふっ、やっと……解放されっべ……」
ほっと安堵の笑みを浮かべたその時、頭がくらっとして倒れそうになる。
「――ブラウン殿!?」
背中をしっかりと支えられたので見上げると、ロヴァルト様だった。
「ロヴァルト様!? ……ありがとうございます……。大丈夫です」
助けてくれたロヴァルト様に笑顔を見せる。
彼は王都騎士団神殿専属部隊の隊長、ガルド・ロヴァルト様だ。神殿の警護の他に、私の護衛などを務めてくれた。
短めの赤茶色の髪に、大柄でがっちりと鍛えられた身体。
寡黙な人なので、私はあまり会話をしたことがない。
それに、いつも怖い顔で睨んでくる。きっと私のことが嫌いなのかもしれない。
それでも、お世話になっていたので最後の挨拶は必要だろう。
「ご存知だと思いますが、私は今日を以て神殿を出ることになりました。今までお世話になりました。ありがとうございました」
私が微笑みながら挨拶すると、ロヴァルト様の顔が一層険しくなった。
「……はい」
ロヴァルト様はそれだけ言って押し黙ってしまう。
(……会話が続かない……)
「……えっと、それでは、さようなら。お元気で……」
私が一礼して、歩き出すと後ろから微かに声がしたような気がした。振り返るが、ロヴァルト様は顔を逸らしている。……気のせいだったようだ。
私は再び歩みを進め、その場から遠ざかる。
「……ブラウン殿……」
そんな呟きは聞こえなかった。
◇ ◇ ◇
「じぃちゃん、帰ったよ〜」
少ない荷物を抱えて、私は田舎のクレイ村に戻ってきた。ここは私の故郷で、十二歳まで育った場所だ。
「おおう、コレット! よく戻ったべな。ちょっと見ねぇうちに大きくなったべ」
「じぃちゃんも、元気そうで安心したよ〜」
テリーじぃちゃんは私に気付くと、畑作業の手を止めた。野良仕事中のじぃちゃんはまだまだ現役バリバリだ。
「採れたてのトマトがあっべ。コレット、好きじゃろ?」
「うん、やった! 食う食う!」
緑の広がる大地。遠くに見える山々。どこまでも深い青空に、流れる白い雲。
吹き抜ける風が私の茶色の髪を揺らし、私は大きく息を吸った。
「やったぁ、戻ったべーー!」
私が畑の真ん中で叫んでいると、じぃちゃんは苦笑いをする。
「ほらほら、コレットや。はよぉ、家さ戻るべ」
「あ、うん!」
私はじぃちゃんに促され、久しぶりの我が家に向かうのだった。
『コレット、これやっておきなさいよ! あなたみたいな田舎者が第一聖女だなんて、認めませんわ!』
ベルニカが私に紙の束を投げつける。辺りには、書類の山、山。各地の報告書や、嘆願書まで。
(ひっ、これって、神殿の事務仕事だべ。……いや……っ、もう、いやじゃーーっ)