追放された搾りカス聖女は、第二の人生を謳歌する。なのに、激重騎士隊長が放してくれません! なんであんたぁ、ここにいるんだべ!?
「ロヴァルト様、これ染み抜き終わりましたので、どうぞ」

 ロヴァルト様はトマトのお礼にと、じぃちゃんの畑仕事を手伝ってくれた。その間に私は、服の染み抜きをしておいた。

「……あぁ」
 彼は服を受け取ると、素早く羽織る。 

「今度トマト食べる時は気を付けてくださいね」
 私が笑いかけると、ふいと顔を逸らされてしまう。

(……ん? やっぱ嫌われてんのかな? じぃちゃんとは話すのに)

「……では、また」
 そう言うとマントを翻し、去っていった。

「……で、結局、何しに来たんだべ?」

 遠ざかる後ろ姿を見送りながら、私は首を傾げるのだった。


 翌日、朝食を終えて畑に向かうと、ある大きな人影を目撃する。

「テリー殿、これはどこに運べばいいんだ?」
「あぁ、これはこっちに頼むべ、隊長さんよぉ」

(な、何で? 普通に馴染んでるべー!?)

 じぃちゃんの指示に従い、ロヴァルト様がせっせと野良仕事に勤しんでいる。

「やっぱり、若ぇもんは違うのぉ」
「いや、そんなことはない。テリー殿の働きには感心させられる」
「そうかのぉ?」

(って、めっちゃ仲良くなってるし……) 

 私が唖然として突っ立ってると、二人がこちらに気付いた。

「おぉコレット、来たか。今日も隊長さんが手伝ってくれるそうじゃよ」
「そうなんだね。えっと、よろしくお願いします」
 私が頭を下げると、ロヴァルト様はいつも通り視線を逸らす。

「……あぁ」
 短く返事をして、ポリポリと頬を掻いた。

 その後、トマトやキュウリを籠いっぱいに収穫し終える。ロヴァルト様はとても手際が良くて、いつもの半分の時間で終わった。
 重い物も全部運んでもらえて、とても助かった。

「……こんなに大量の野菜をどうするんだ?」
 ロヴァルト様は顎に手を当て、籠に山盛りの野菜を見ながら呟く。

「これは隣町の八百屋さんに運んでもらうんですよ。そろそろハンスが取りにきてくれて……」
「……ハンス?」
 ロヴァルト様の眉がピクリと動く。

「え、はい。ハンスは私の幼馴染なんですが……」
 私が話しているうちに、ロヴァルト様の顔が鬼の形相に変わってくる。
(な、なんか、変なこと言ったべ? こ、怖い怖い怖いっ)

 その時、ゴトゴトと荷車を引いたハンスがやってくる。

「コレットおまたせー。今朝の収穫は――っ!?」
 ハンスは私の横の人物を見た瞬間、息を止めた。

「ハンスッ、息! 息!」

「……っ、はぁ、はぁ、えっと……、え、どちら様? ……俺、殺されっべ?」
 ハンスは顔面蒼白になる。

 たしかに、ロヴァルト様は視線だけで殺傷能力がありそうだが、さすがに殺しはしないだろう……たぶん。
 
「えぇと、ロヴァルト様、彼が野菜を運んでくれるハンスです。ハンス、こちらは王都騎士団神殿専属部隊の隊長のロヴァルト様です」
 二人にそれぞれを紹介する。

「あぁ、神殿の。えっと、ハンスと言います。コレットとは幼馴染で――ひっ!?」
 ハンスが喋り始めると、一層ロヴァルト様の眼光が鋭くなる。

「……ガルド・ロヴァルトだ」
 ロヴァルト様は低音の声で名乗り、黙ってしまった。

 とりあえず、収穫した野菜をハンスに渡す。ハンスは荷車に乗せた籠の中を確認する。

「はいよ、たしかに預かったからな。……コレット」
 ハンスは視線を横に逸らし、少し離れた場所に立っているロヴァルト様に向ける。そして、苦笑しながら声を潜めた。

「あの神殿の騎士、何でここにいんだ? おめー、もう聖女じゃねぇべ?」
「うーん? 私にも分からん」
 私が首を傾げていると、ハンスはスッと真顔になった。

「気を付けろ。なんか執着がやべぇぞ……」
「執着……? 何だべ、それ?」
「そりゃ、おめー……っ」

「……ブラウン殿、終わったか?」
「!?」
 後ろ姿から低音の声が聞こえて、私とハンスは飛び上がりそうになった。

「じゃ……じゃあ、俺は行くな! またな!」
 ハンスはまるで逃げるかのように遠ざかっていった。
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