追放された搾りカス聖女は、第二の人生を謳歌する。なのに、激重騎士隊長が放してくれません! なんであんたぁ、ここにいるんだべ!?
2
トマト畑に突如現れた大男、ロヴァルト様にバレてしまった。私の居場所も、この言葉遣いも。
バレてしまったなら、もうヤケだ。
「っていうか、あんたぁ、なんでここにいるんだべ!?」
私はロヴァルト様を問いただす。
彼は神殿専属の騎士だ。神殿の警護や、第一聖女に就任したベルニカの護衛のはず。
こんな辺鄙な田舎の村にいるなんて、おかしいのだ。
「……」
私の問いかけにロヴァルト様は黙り込み、こちらを睨みつけている。
私のことが嫌いでも、この村に来たということは、神殿から言い付けられて来たということか。
(……監視? 私が神殿に逆恨みでもするかもって? ……まだ、神殿から逃げられんの?)
「……私は、別に神殿を恨んでません。ですから、安心してお帰りくださいっ」
私はロヴァルト様の目を見て、はっきりと告げる。
ロヴァルト様の息を呑む音が聞こえた。そして、何か呟く。
「……っ。……尊……い……っ」
(ん? とーと?)
よく聞き取れない。ロヴァルト様は気に入らないのか、まだこちらを睨んでいる。
私も負けじと睨み返していると――。
「まぁまぁ、二人とも。そう睨み合ってねぇで、ほら、トマトでも食いなぁ」
じぃちゃんが私たちの間に入り、ロヴァルト様に採れたてのトマトを差し出す。
「え、じぃちゃん、さすがにそのままじゃ……っ」
ロヴァルト様は貴族出身だ。トマトをそのまま差し出すなんて失礼なのではと、止めに入る。
「……いただこう」
ロヴァルト様は気にせず、トマトを受け取り豪快にかぶりついた。
「……っ、……甘いっ」
そう言って薄茶色の瞳を輝かせる。いつも表情を変えないロヴァルト様の、そんな顔は初めて見た。
気に入ってくれたらしく、むしゃむしゃとあっという間に平らげる。
「おぅ、いい食べっぷりじゃ。もう一ついるかぁ?」
じぃちゃんがトマトを差し出す。
「じぃちゃんっ」
もうさすがに……って、止めようと声をかける。
「……いただこう」
「……え?」
ロヴァルト様はその後も止まらずに、トマトを五つもペロリと平らげた。
「……ご老人、ご馳走になった」
そう言うと、手で口元を拭う。
「ふぉっふぉっふぉっ。気に入っていただけて、何よりじゃ」
じぃちゃんは満足げに微笑む。
さすがじぃちゃんだ。騎士隊長様相手にも臆することはない。
ふとロヴァルト様の騎士服の胸の辺りが、汚れているのに気付く。トマトの汁が飛んだのかもしれない。
早く拭かないとシミになってしまう。
私はエプロンからハンカチを取り出す。
「ロヴァルト様、服にトマトの汁が付いてます。……ちょっと失礼しますね」
「……っ!?」
私は近づき、トマトの汁を拭き取るが、だいぶ染み込んでしまったようで色が落ちなかった。
「んん? なかなか落ちない……。一度濡らしたほうがいいべか……?」
「……て、ん……し……」
一生懸命に擦っていると、頭上から声が聞こえてきて顔を上げる。
「え? 何ですか?」
至近距離で目が合った。
「――っ。死……っ」
ロヴァルト様は顔を真っ赤にし急に震え出して、口を押さえた。
「え? 何だべ!? 食べ過ぎ? 吐く? お腹痛いべ!?」
――ガルド's poem――
天使が舞い降りた
輝く琥珀色の髪をたなびかせ トマト畑に現れた
その朝露のような澄んだ瞳が こちらに注がれる
小鳥のようなその美しい声を この俺が忘れるはずがなかろう
……あぁ、天使よ。許したまえ。
貴女の秘密を暴いてしまったことを
俺の命が必要なら 奪ってくれて構わない
俺は 貴女のその赤き唇から紡がれた旋律を 胸に抱きながら
――今ここで 朽ち果てたとしても 悔いはない
――――――――
バレてしまったなら、もうヤケだ。
「っていうか、あんたぁ、なんでここにいるんだべ!?」
私はロヴァルト様を問いただす。
彼は神殿専属の騎士だ。神殿の警護や、第一聖女に就任したベルニカの護衛のはず。
こんな辺鄙な田舎の村にいるなんて、おかしいのだ。
「……」
私の問いかけにロヴァルト様は黙り込み、こちらを睨みつけている。
私のことが嫌いでも、この村に来たということは、神殿から言い付けられて来たということか。
(……監視? 私が神殿に逆恨みでもするかもって? ……まだ、神殿から逃げられんの?)
「……私は、別に神殿を恨んでません。ですから、安心してお帰りくださいっ」
私はロヴァルト様の目を見て、はっきりと告げる。
ロヴァルト様の息を呑む音が聞こえた。そして、何か呟く。
「……っ。……尊……い……っ」
(ん? とーと?)
よく聞き取れない。ロヴァルト様は気に入らないのか、まだこちらを睨んでいる。
私も負けじと睨み返していると――。
「まぁまぁ、二人とも。そう睨み合ってねぇで、ほら、トマトでも食いなぁ」
じぃちゃんが私たちの間に入り、ロヴァルト様に採れたてのトマトを差し出す。
「え、じぃちゃん、さすがにそのままじゃ……っ」
ロヴァルト様は貴族出身だ。トマトをそのまま差し出すなんて失礼なのではと、止めに入る。
「……いただこう」
ロヴァルト様は気にせず、トマトを受け取り豪快にかぶりついた。
「……っ、……甘いっ」
そう言って薄茶色の瞳を輝かせる。いつも表情を変えないロヴァルト様の、そんな顔は初めて見た。
気に入ってくれたらしく、むしゃむしゃとあっという間に平らげる。
「おぅ、いい食べっぷりじゃ。もう一ついるかぁ?」
じぃちゃんがトマトを差し出す。
「じぃちゃんっ」
もうさすがに……って、止めようと声をかける。
「……いただこう」
「……え?」
ロヴァルト様はその後も止まらずに、トマトを五つもペロリと平らげた。
「……ご老人、ご馳走になった」
そう言うと、手で口元を拭う。
「ふぉっふぉっふぉっ。気に入っていただけて、何よりじゃ」
じぃちゃんは満足げに微笑む。
さすがじぃちゃんだ。騎士隊長様相手にも臆することはない。
ふとロヴァルト様の騎士服の胸の辺りが、汚れているのに気付く。トマトの汁が飛んだのかもしれない。
早く拭かないとシミになってしまう。
私はエプロンからハンカチを取り出す。
「ロヴァルト様、服にトマトの汁が付いてます。……ちょっと失礼しますね」
「……っ!?」
私は近づき、トマトの汁を拭き取るが、だいぶ染み込んでしまったようで色が落ちなかった。
「んん? なかなか落ちない……。一度濡らしたほうがいいべか……?」
「……て、ん……し……」
一生懸命に擦っていると、頭上から声が聞こえてきて顔を上げる。
「え? 何ですか?」
至近距離で目が合った。
「――っ。死……っ」
ロヴァルト様は顔を真っ赤にし急に震え出して、口を押さえた。
「え? 何だべ!? 食べ過ぎ? 吐く? お腹痛いべ!?」
――ガルド's poem――
天使が舞い降りた
輝く琥珀色の髪をたなびかせ トマト畑に現れた
その朝露のような澄んだ瞳が こちらに注がれる
小鳥のようなその美しい声を この俺が忘れるはずがなかろう
……あぁ、天使よ。許したまえ。
貴女の秘密を暴いてしまったことを
俺の命が必要なら 奪ってくれて構わない
俺は 貴女のその赤き唇から紡がれた旋律を 胸に抱きながら
――今ここで 朽ち果てたとしても 悔いはない
――――――――