辺境のちっちゃな捨てられ領主は敵国女帝のお気に入りのようです~転生幼児、最強の家族とスキルを持つ秘密兵器でした~
 彼女の膝の上にあるのは、馬車の中など移動中に書類仕事をするための簡易机である。インクやペンは、ベッドサイドテーブルの上。そこにはトーリの額を冷やすための冷たい水とタオルも用意されていた。

「んむぅ……」

 国を治めるのが、どれだけ大変なことか、トーリは知っている。だから、いつまでもトーリの側にいるわけにいかないというのもわかっているのに。

(そんなに、陛下の役に立ちたいって思うのが駄目なのかな……?)

 無理をする、と言われてしまったことがトーリの中で引っかかっていた。無理をしたつもりなんてない。自分にできることをやっていただけなのに。

「……眠れ、トーリ。身体を休めれば、それだけ早く起きられるようになるぞ」
「はい、陛下」

 言われてトーリはおとなしく目を閉じる。
 トーリに付ききりの女帝の様子に、危機感を募らせる者がいることなんて、この時はまったく予期していなかった。

「ふっかーつ!」

 結局、部屋から出ることを許されたのは、発熱してから一週間後のことだった。
 ガイストを連れて庭園に出たトーリは、大きく伸びをする。娑婆の空気が美味いというのは、こういうことか。
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