振り向いて欲しいのは…
芸能界には、子どもの頃からいた。
いわゆる子役だった。
そこに、天使みたいに可愛い子がいた。
つぼみちゃん。
現場が一緒だと、笑顔で挨拶してくれて、よく話すこともあった。
でも小学校の中学年くらいから、会わなくなった。
「お母さん、つぼみちゃんは?」
「あの子なら、引退したよ」
「え…」
なんでもない顔で言われたのには腹は立ち、何のさよならもなくいなくなったのには悲しんだ。
それから俺は、事務所を変えて、アイドルになった。
つぼみちゃんに見つけてもらえるように。
つぼみちゃんが、テレビで俺を見てカッコイイと思ってもらえるように。
頑張りは報われて、人気アイドルグループのセンターになれた。
高校に行けば、道中も教室でも、目線の的になるのは俺だった。
だけど何も嬉しくなかった。
俺が見たかったのは、沢山のうちわやペンライトじゃない。
聞きたかったのは、黄色い声援でもない。
つぼみちゃんの姿と、おはよう、と優しく笑う所。
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