振り向いて欲しいのは…

芸能界には、子どもの頃からいた。

いわゆる子役だった。

そこに、天使みたいに可愛い子がいた。

つぼみちゃん。

現場が一緒だと、笑顔で挨拶してくれて、よく話すこともあった。

でも小学校の中学年くらいから、会わなくなった。


「お母さん、つぼみちゃんは?」

「あの子なら、引退したよ」

「え…」


なんでもない顔で言われたのには腹は立ち、何のさよならもなくいなくなったのには悲しんだ。


それから俺は、事務所を変えて、アイドルになった。

つぼみちゃんに見つけてもらえるように。

つぼみちゃんが、テレビで俺を見てカッコイイと思ってもらえるように。

頑張りは報われて、人気アイドルグループのセンターになれた。


高校に行けば、道中も教室でも、目線の的になるのは俺だった。

だけど何も嬉しくなかった。

俺が見たかったのは、沢山のうちわやペンライトじゃない。

聞きたかったのは、黄色い声援でもない。

つぼみちゃんの姿と、おはよう、と優しく笑う所。

< 1 / 3 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop