その黒曜、あまりに気高く、あまりに最狂

嵐の前の夜凪に

神代の潜むアジトを特定し、明日の放課後に全戦力で殴り込みをかけることが決まった、決戦前夜

深夜の東京湾沿いの防波堤に、2台の単車が滑り込んできた

重厚な排気音を止めてヘルメットを脱いだのは、総長・レイと、副総長・三浦颯太だ

昼間の張り詰めた空気から解放された海辺には、ただ波の音だけが静かに響いている

「ふぅー、生き返るわー。明日はマジで大戦だからさ、こうしてレイさんと2人で夜風浴びるの、最高の息抜きだわ」

颯太はニュアンスマッシュの髪をクシャッと掻きながら、ガードレールに背中を預けていつもの軽いタメ口をきいた

レイはブレザーを単車のシートに置き、白のカッターシャツの袖を少しだけ捲り上げた

腰まである黒髪が、柔らかな潮風にふわりと遊んでいる

彼女は缶コーヒーを開けると、上品に口をつけた。

「そうですね。明日は少し、騒がしい夜になりますから。こうして心を落ち着かせておくのも悪くありません」

いつもと変わらない、丁寧な敬語。

だけど、颯太は隣に立つ彼女の細い肩が、少しだけいつもより小さく見えた気がした。

颯太はふっと真面目な顔になり、海を見つめたまま語りかける

「……ねえ、レイ。昨日の集会の演説、マジでカッコよかったよ。下の奴ら、みんな泣きそうな顔してレイさんに魂預けてた。……でもさ、ちょっと背負いすぎじゃない? 命まで寄こせとは言わない、なんて格好つけてさ」

颯太の心配するような、相棒としての優しいタメ口

それを聞いたレイは、ふっと自嘲気味に口元を緩め、夜の海へ視線を落とした。

そして、胸の奥にある孤独を隠すように、静かに、でも冷たい声音で言い放った。

「冷たい人間だと思われてる方が楽なんで。期待されるほどの優しさは持ち合わせていないので」
< 33 / 47 >

この作品をシェア

pagetop