藤堂彬の誤算だらけの結婚生活
「もー! お父さんったら、信じられない」
ハヤシライスを食べようとスプーンをご飯に差したまま、大須賀藍(おおすかあい)は大きな声を出す。
「私に相談もなく勝手に変な約束してこないでよ!」
プンスカしながら文句を言うが父はどこ吹く風だった。
「相談したら、お前は嫌だと言っただろう」
「当たり前よ。お見合いなんて、私はするつもりないんだから」
製薬会社の社長である父は常に多忙。そんな父から久しぶりに早く帰れるから、家でゆっくり食事をしようとメッセージが入った時は単純に嬉しかった。
父親との食事が嬉しいなんて、二十六歳女子としては少々変な感覚かもしれないが、幼い頃に母を亡くした藍にとって父はたったひとりの家族なのだ。
一応ふたりで暮らしているが父はあまり家にいないから、食事も生活もバラバラだ。親子水入らずでの食事は一カ月ぶりだろうか。
嬉しいと思っていたのに、そこでとんでもない話をされてしまった。
「私に結婚は無理だって知ってるくせに、相手の人に失礼だよ」
そう言って睨むと、父は少し悲しそうな顔になる。
「無理なんて、そんなことはないよ、藍」
胸が少し痛むけれど、言わないわけにはいかなかった。
藍は生まれつき心臓に疾患を抱えている。そのため幼少期からずっと入退院を繰り返しながら生きてきた。
成長に合わせて何度か受けた手術のおかげで、今は自宅にて人並みの生活を送れている。通信などの手段を駆使して遅れ遅れで大学を卒業したのが昨年の春。だが就職はしていない。
いわゆる家事手伝いというやつだ。
労働に体力がついていかないからだが、理由はそれだけではない。
大きな手術をもう一回受けなくてはならないからだ。
そんな自分が結婚なんてできるはずがない。
「だがお前も二十六だ。結婚するなら早い方が……」
「だから、そもそも結婚自体するつもりがないんだって! 早いも遅いもないのよ」
時代錯誤かつ無意味な心配をする父に呆れ返る。父は祖父の代は中堅だった大須賀製薬をトップクラスにまで押し上げた敏腕社長だと言われているが、本当だろうかと疑ってしまう。
とにかく藍に対しては過保護で甘くて、そして束縛がきつい。
ハヤシライスを食べようとスプーンをご飯に差したまま、大須賀藍(おおすかあい)は大きな声を出す。
「私に相談もなく勝手に変な約束してこないでよ!」
プンスカしながら文句を言うが父はどこ吹く風だった。
「相談したら、お前は嫌だと言っただろう」
「当たり前よ。お見合いなんて、私はするつもりないんだから」
製薬会社の社長である父は常に多忙。そんな父から久しぶりに早く帰れるから、家でゆっくり食事をしようとメッセージが入った時は単純に嬉しかった。
父親との食事が嬉しいなんて、二十六歳女子としては少々変な感覚かもしれないが、幼い頃に母を亡くした藍にとって父はたったひとりの家族なのだ。
一応ふたりで暮らしているが父はあまり家にいないから、食事も生活もバラバラだ。親子水入らずでの食事は一カ月ぶりだろうか。
嬉しいと思っていたのに、そこでとんでもない話をされてしまった。
「私に結婚は無理だって知ってるくせに、相手の人に失礼だよ」
そう言って睨むと、父は少し悲しそうな顔になる。
「無理なんて、そんなことはないよ、藍」
胸が少し痛むけれど、言わないわけにはいかなかった。
藍は生まれつき心臓に疾患を抱えている。そのため幼少期からずっと入退院を繰り返しながら生きてきた。
成長に合わせて何度か受けた手術のおかげで、今は自宅にて人並みの生活を送れている。通信などの手段を駆使して遅れ遅れで大学を卒業したのが昨年の春。だが就職はしていない。
いわゆる家事手伝いというやつだ。
労働に体力がついていかないからだが、理由はそれだけではない。
大きな手術をもう一回受けなくてはならないからだ。
そんな自分が結婚なんてできるはずがない。
「だがお前も二十六だ。結婚するなら早い方が……」
「だから、そもそも結婚自体するつもりがないんだって! 早いも遅いもないのよ」
時代錯誤かつ無意味な心配をする父に呆れ返る。父は祖父の代は中堅だった大須賀製薬をトップクラスにまで押し上げた敏腕社長だと言われているが、本当だろうかと疑ってしまう。
とにかく藍に対しては過保護で甘くて、そして束縛がきつい。