藤堂彬の誤算だらけの結婚生活
 なにより、これまで続けてきた治療と手術、これから臨む手術の内容から考えると、あり得ないくらい前向きだった。
 見合いなんてとんでもないと言いながらも、謝るために現地にきたのは父親を思いやってのこと。世間知らずだと自分で言ってはいるが、彬としてはそれだけではないなにかを感じた。
 自分にはあまりない感覚なのだが、一般的な表現でいうと、好感を抱いたといったところか。
 打算と保身、お世辞ばかりの世界にいる自分にはなかなかお目にかかれない珍種とも言える。
 ——だからだろうな、結婚を思いついたのは。
 いくらお互いにメリットがあるからといっても、嫌悪感を抱く相手では結婚生活は維持できない。
 ほとんど干渉し合わないとはいえ、同じ家に住むのだから。
< 42 / 141 >

この作品をシェア

pagetop