藤堂彬の誤算だらけの結婚生活
 問いかけられて、藍はこの一週間、ゆっくりと荷解きをしながら計画していたことを口にする。
「まずは前々からしたいと思ってた図書館のボランティア。陽菜が誘ってくれたやつね」
「あー、あれね。いいじゃんいいじゃん」
「それからひとりで出かけたい。料理をしたり、家事をしたり、ひとりでランチもしてみたい。カフェとかで」
「ふーん、なるほどね。そういうの実家にいたらできなかったもんね」
 陽菜がニコニコしていうと、釣られたように弥も笑った。
「心配は心配だけど藍ちゃんが楽しそうなのはよかったかな」
 今藍が口にしたことは、二十六歳の大人としては当たり前すぎることだが、ふたりともバカにしないでいてくれる。
 陽菜が恋愛をしてみろとけしかけるのも、弥が過剰なくらい心配するのも友情からなのだ。
 ありがたい友情を噛み締める。
「まあ、頑張りなよ。ボランティアは私の職場だから、いつでも助けてあげられるし」
「困ったことがあったらすぐに連絡してね。実家よりここの方が僕のマンションから近いし」
 ふたりとも、藍が手術を控えているのは知っている。その手術がどういうものかも。
 そして藍がどれほど自由を求めているかも理解してくれているのだ。
「だけどちょっともドキドキしないの? ちょっともカッコいいと思わない?」
 それでも諦めきれないように陽菜が言う。
「はるちゃん、けしかけるようなのはよくないよ」
 弥が嫌そうに止めた。
「ないよ、ないない」と笑いながら首を横に振ると、弥がほっと息を吐いた。
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