藤堂彬の誤算だらけの結婚生活
 けれど「料理ができるなんて夢みたい。彬さんありがとうございます」と言う言葉にはっとする。
 そうだ彼女にとってはこれが目的なのだと思い出し正気を取り戻した。
 だから、それでいい。もう放っておこう。
 ……と、思ったのだけれど。
「よし次はニンジンだ」と言って人参を手に取った藍を見て、思わずストップをかけてしまう。
「ピ、ピーラーを使いなさい」
「……え?」
 彼女の料理に口出しするなど自分にとっては時間の無駄。だがこのままでは次は人参が犠牲になる。それに彼女の指も心配だった。
 怪我でもされてはさすがに放ってはおけないし、そうなるとさらに時間が無駄になる。黙って見過ごすわけにはいかない。
 レンジがピーピーと鳴ってるのもかまわずに、彬は引き出しからピーラーを出してきた。
「初心者が包丁で皮剥きはハードルが高い。無駄になるし、何より危ない」
「ヒーラー……?」
「ピーラーだ。根菜類の皮剥きに使う」
「へえ、だけどどうやって使うのかわかりません」
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