藤堂彬の誤算だらけの結婚生活
 当然皮剥きの基礎など載っていない。
「このシェフがいるレストラン、何度か行ったことがあるんですがシチューが絶品なんですよ! 久しぶりに食べたくなってしまって」
 にっこりとして彼女は言うが、その内容も彬からすれば意味不明だった。
 確かに発行者のシェフは有名なレストランのオーナーのようだ。だがそのレストランはここからもそれほど遠くない場所にある。シチューを食べたくなったのなら、食べに行けばいいじゃないか。
 それをなぜ自分で時間をかけて作ろうとする……?
「だけど料理って思ったより難しいですね……。この調子じゃ出来上がるの夜中になりそう。だけど楽しい!」
 そう言って彼女はへへへと笑う。
 彬は目を見開いた。
 信じられない。
 これからまだまだ時間を無駄にすると宣言しながら、どうしてそんなに嬉しそうなんだ……?
 一瞬彬は宇宙人にでも出会ったような感覚になる。
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