藤堂彬の誤算だらけの結婚生活
 ぞくぞくとした悪寒を感じて、藍は読んでいた本から目を上げる。
 窓の外を見るといつのまにか日が傾き、薄暗くなっている。
 時計を見ると時刻は午後五時を過ぎていた。
 もうこんな時間か、と藍は驚く。
 美術館から帰ってきたのが三時頃。帰りに寄った書店で買った本をちょっとだけと思いベッドの上で広げた。あっという間に二時間以上経っている。
 ふるりと身体を震わせて、藍はリモコンで暖房をつける。部屋はすぐに暖かくなるけれど寒気は治らなかった。どうやら身体の中からくるものらしい。
 この感覚は……と、暗い気持ちになった。この感覚は嫌というほど知っている。熱が出る予兆だ。
 ——やっちゃった。最近楽しかったからな……。
 もう熱が出るくらいは慣れっこだから、寝込むほどではないけれどそれでももう寝ることする。夕食はデリバリーにするつもりだったが食欲はない。とりあえずパジャマに着替えて布団に潜り込んだ。
 ——彬さんに知らせなきゃ。
 そう思い、スマホに手を伸ばしかけて躊躇する。体調の変化は逐一報告をする約束だが、もし彼が今日は帰宅するつもりがなかったとしたら、申し訳ないと思ったからだ。
 ——結局、研究の邪魔はしないっていう約束、あんまり守れていないしな……。
 初日にやらかしてしまってから気をつけるようにしていたのだが、どうにもうまくいっていない。
 人のせいにするつもりはないが、彼が毎日帰ってくるからだ。
 たいていは夕食が出来上がる頃、藍の体調を目で確認するためか必ずキッチンへやってくる。
 だからつい、一緒にどうか?と尋ねてしまうのだ。
 藍が参考にしている料理本はふたり分で載っていて、ひとりで食べると余ってしまう。
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