その黒曜 番外編
その時、颯太がふっと悪戯っぽいヤンキーの目をギラつかせ、レイを振り返った

「ねえ、レイ。せっかく夜の海に来たんだからさ、総長もちょっとははしゃぎなよ」

「え? 私はここで皆さんの監視を――」

レイが言いかけた瞬間、颯太は彼女の細い手首をガシッと掴んだ

「はい、お嬢様、強制連行ね〜!」

「ちょ、三浦君……! 離しなさい、はしたないですよ……っ!」

丁寧な敬語で抗議するものの、レイの顔は少しだけ赤く染まっていた

颯太はそのままタメ口で笑いながら、レイを引っ張って波打ち際へと飛び込んでいく

「冷たっ……!」

白いカッターシャツの裾と、スカートの裾が、夜の冷たい海水に濡れてきらきらと光る

「ほら、レイさん! 蓮のやつ、後ろから狙い目だよ!」

颯太が叫ぶと、レイは一瞬だけ夜の総長・レイとしての鋭い眼光を放ち、お淑やかな笑顔のまま両手でバシャッと大量の海水を蓮の背中に浴びせかけた

「ぶふぉっ!? れ、レイさんまで参戦かよ! 降伏、降伏っす!!」

蓮が這いつくばり、一同にどっと大きな笑い声が沸き起こる

多久は、波打ち際で傷だらけのカッターシャツを濡らしながら、心の底から楽しそうに笑っているレイの姿を、眩しそうに見つめていた

普段は誰にでも敬語で、圧倒的に強くて、完璧な総長。

だけど、今こうして仲間たちに囲まれて大はしゃぎしている彼女は、ただの、最高に可愛い等身大の女の子に見えた
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