キミが家族になった、その日から。
「お母さんが……倒れた。」
「──え?」
一瞬、意味が分からなかった。
「病院へ向かおう。」
それだけ言うと、継父は夏音の肩にそっと手を置いた。
足が震える。息がうまく吸えない。
「うそ……。」
朝まで元気だったじゃん、“ハンバーグ作るね”って笑ってたじゃん…なのに、どうして?
廊下を歩いていると、向こうから走ってくる人影が見えた。
「夏音!」
─── 涼だった。
先生から連絡を受け、急いで教室を飛び出してきたのだろう。
息を切らしながら夏音の前で立ち止まる。
「大丈夫か…?」
その言葉を聞いた瞬間、張りつめていた気持ちが少しだけほどける。
「……分かんない。」
震える声で答えることしかできなかった。涼は何も言わず、そっと夏音の肩を支えた。
「……行こう。」
その一言だけが、今の夏音を前へ進ませてくれた。3人は急いで病院へ向かう。窓の外では、朝と同じ雪が静かに降り続いていた。
まるで、この先に待つ現実を知っているかのように。