結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました
 まず、データ上〝会ってみたい〟と思ってもらえるように整えるのが、カウンセラーの大事な役目だった。

(この方は照れ屋で口数は少ないけど、聞き上手だから、優しい雰囲気が伝わるように書いて差し上げたいな。仕事が公務員で安定しているのもさりげなくアピールして……)

 面談したときの印象やメモを反芻し、データを何度も確認しながら慎重に作成していく。やっと作業を終えたときには、時刻は二十時近く。同僚たちはすでに帰宅し、誰も残っていなかった。

「うーん、肩がガチガチ。今日はもう終わりにしよう」

 独り言を零しながら、大きく伸びをしていると、事務所のドアが開いた。

「あら、まだいたのね。遅くまでご苦労様」

「所長、お疲れ様です」

 アイボリーのスーツに身を包んだ女性が、軽やかな足取りでこちらへ近づいてくる。彼女は持田紀代子(きよこ)。ここマリアージュ・アクシアの所長であり、創業者だ。

「うちの娘は、本当に仕事熱心ね」

 笑みを深めながらそう言った彼女は、透子の母でもあった。
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