結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました
 命令のような言葉なのに、その低い声には、どこか懇願にも似た響きが滲んでいたのだ。

 薄暗い車内で、至近距離で迅の瞳がまっすぐ透子を捉えて鈍く光っている。まともに顔を見てはいけない気がして、透子は慌てて視線を逸らした。

 すると、さらに迅はグッと身を乗り出した。息を詰めた次の瞬間、長い腕が伸び助手席のシートを引き出した。続いてカチリ、とバックルが嵌まる音がする。

「これでいい」

 迅はゆっくりと体を離した。

「さて、行くか。真剣交際最初のデートだな」

 低く告げると、迅は満足げに口角を上げて、自らのシートベルトも装着する。次の瞬間、エンジンがかかり、車は静かに走り出した。

 いろいろ言いたいことはあるのに、透子は熱を持った胸を押さえるようにバッグを抱えたまま、しばらくまともに彼の方を見ることができなかった。

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