結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました
 迅はタブレットをテーブルに戻し、淡々と言葉を続ける。

「まあ、古株の役員は保守的だからね。なにかと兄さんに物申したいんだろう」

「新成分を配合した化粧品がヒットしているのも、研究開発に時間と金をかけてきた成果だ。当たり前の事実すら理解できない役員なら、いても意味がない」

「気持ちはわかるけど、そのまま役員会で言ったら駄目だよ」

 迅が言い切ると、恭弥は大げさに肩を竦めて苦笑した。

 父親譲りの面差しを持つ兄弟だが、恭弥の方が迅より柔和な顔立ちをしている。性格も温和で、周囲との調和を図るのが得意だ。

 ときには冷酷な経営判断を断行する〝剛の社長〟である迅に対して、恭弥は〝柔の副社長〟としてクッション役を担いつつ迅をサポートしている。

 優秀な弟は迅にとって、なくてはならない右腕だ。

 そのあとも、ふたりで業務についての情報交換と認識の共有を続けた。

「この前の打ち合わせ、代わってくれて助かった」

 一通り話終え、迅はコーヒーカップを手に取る。

「普段、働きすぎなんだから、俺や他の人間で済む内容だったら遠慮なく頼ってくれていいんだよ」
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