結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました
 恭弥も同じようにコーヒーカップを持ち上げて、軽くため息をついた。

 透子とデートの約束をしていた先週の日曜、家を出る直前、ヨーロッパ圏の現地法人からどうしてもと経営層と相談したいと、オンライン会議の依頼が入った。

 内容は今進めているブランド戦略の方向転換について。対応しようとしたら、メールの同報に入っていた恭弥が、『俺が受ける。問題がありそうだったら連絡する』と申し出てくれたのだ。

 結局、緊急性はない相談で、翌日報告を受けただけで済んだ。

「でも、いつもだったら強引にでも自分で対応しそうなものなにに、珍しく素直に任せてくれたよな」

「まぁ、お前にいつも休めと口うるさく言われているからな」

「だって、兄さんになにかあったら俺が社長にならなきゃいけなくなるじゃないか。俺はその器じゃないし責任を負うのも御免だからね」

 恭弥は冗談めかしているが、迅の健康を心配してくれている。

「最近割と素直に休んでくれるようになったのは、婚活のため?」

「そうだな」

 迅はあっさり認めた。紛れもない事実だからだ。兄の反応に恭弥は目を丸くして、コーヒーカップを置いた。
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