結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました
『ありがとう。もちろん約束する。透子さんに振り向いてもらえるよう、努力するよ』
 笑顔で返したその言葉は、場の流れに合わせた方便に過ぎなかった。

『マリアージュ・アクシアの所長さんから連絡があったわ。あなた、ちゃんと活動を始めたんですってね』

 その後すぐに母から連絡が入った。紀代子は早々に母に報告してくれたらしい。

『うまくいったら紹介します。あと、どうなるかわからないので、周りには絶対に口外しないでくださいよ』

 そう伝えると母は『あなたがそのつもりになっただけでもいいわ』と大層喜んでいた。

 メッセージを送りあうことから始まった透子との交際。挨拶だけの味もそっけもない内容だが、家族でもない女性と個人的なやりとりするのは、だいぶ久しぶりだった。

 迅は昔から数えきれないほど女性に言い寄られてきた。交際経験がないとはいわない。だが、彼女たちは家柄や見た目に惹かれていただけで、取り繕った笑顔の裏では常に損得を計っているのが透けて見えた。

 人間と利益を求める生物だから、それが間違っているとは思わない。しかし、彼女たちと一緒にいてもさして心は動かなかったし、楽しいとも思わなかった。
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