結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました
 そして今も、彼女の笑顔を見たい。こうして手を繋いで、少しでも長く一緒にいたいと願っている。

(――どうやら俺は、完全に透子に惚れてしまったようだな)

 ひとたび認めてしまうと、妙に納得できた。今思えば、メリットのための形だけの関係だとしても、特定の女性とイレギュラーな縁を持とうとするなんてあり得ない。

 初めて会ったときから少しずつ、彼女に惹かれていたのだ。

 仕事に誇りを持ち、常に周囲をよく見て細やかに気を配っている。相手に寄り添うのは当たり前にできるくせに、自分のことになるとどこか不器用で、褒められれば困ったように目を逸らし、手を繋いだだけで顔を真っ赤にしてしまう。

 落ち着いた大人の女性に見えるのに、ふとした瞬間に無防備な表情を見せる透子へ、迅はこれまで抱いたことのない感情を募らせていた。

 それは、群がる女性に辟易し、結婚する気など一度も持たなかった男が、初めて落ちた〝恋〟だった。

 しかし、当の透子は『そろそろ解散しましょう』とあっさり帰ろうとする。

 早めに切り上げるのが婚活のテクニックらしいが、知ったことではない。
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