結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました
《年下なの気にならなくくらい、落ち着いて穏やかな人だった。すごくリラックスして話せたの》

 嬉しそうに報告してくれた香織は、彼との交際を希望した。すると、そのあとすぐに男性側のカウンセラーから彼も交際したいと言っていると連絡が入ったのだ。

 すぐに結論を出しているのは、お互いよほど相手が気に入った証拠だ。

(これからのお付き合い次第だけど、うまくいくといいな)

 会社から徒歩で十分ちょっとで到着したのは、表参道の並木道に沿って建つ、ガラスと石造りが印象的な商業施設。高級ブランドやグルメなどが店を連ねる洗練されたエリアの象徴的存在だ。

 エントランスに入ると、人混みの中でも自然に目をひかれる存在があった。

(えっ、迅さん先に着いてたんだ)

 透子は慌てて、壁際に立つ迅のもとへ向かった。

 けれど近づいてから、彼がスマートフォンを片手に誰かと通話している最中だと気づく。

 邪魔をしてはいけないと思い、透子は足を緩めた。少し距離を取った場所で立ち止まったとき、不意に迅の声が耳に届く。

「わかってる。あまりわがままを言うな、亜里沙」

(女性の名前……?)
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