結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました
(……いいの。恋愛経験がなくても結果は出せてる。初めてヴェールも任せてもらえるんだし、最初のカウンセリングからしっかり対応していこう)

 透子は、自分に気合を入れてベッドから立ち上がった。


 それから一週間後、透子は笑顔を引きつらせていた。

「真(ま)壁(かべ)様、それはどういった意味でしょうか」

「今言った通り、僕はここに入会しない。今日はそれを伝えにきただけです」

 ヴェール会員用のサロンにあるカウンセリング室、ソファーの対面に座りながら彼、真壁(まかべ)迅は余裕のある笑みを浮かべている。

 手元のコーヒーを口に運ぶ所作も洗練されている彼こそ、MSBの社長だ。今日は彼との初カウンセリングの日だった。

 高級感のある仕立てのスーツをさらりと着こなし、長い脚をゆったりと組んでいる。
 磨き上げられた革靴や、鈍い光を放つ腕時計、カフスボタンのひとつまで身に着けているものはすべて一流品に見えるが、彼自身がその高級感に一切負けていない。
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