結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました
「少々心配性でしてね。そろそろ身を固めろ、と」

 迅は困ったように軽く肩をすくめる。その仕草さえ、やけに様になっている。

「ご本人としては結婚をお考えではない、と」

「ええ。結婚するつもりはありません」

 コーヒーカップを傾ける迅を前に、透子は心の中で頭を抱えた。

(待って、真壁様、ここに来ちゃだめな人じゃない?)

 結婚相談所は、文字通り結婚したい人が相談に来る場所だ。それなのに、結婚する気がないなんて完全に場違いである。

 とはいえ、「わかりました、お帰りください」と言えるはずもない。

 透子は母にこう言われていたのだ。

『彼のお母さまから重ね重ね頼まれて、入会金も会費もすでに支払われてるの。それに彼女、富裕層では顔が広くて有名なのよ。うまく成婚させたら、うちの評判も上がるわ。頼んだわよ!』

(もしかして所長、ご本人が乗り気じゃないの知ってて、私に押し付けたんじゃ……)

 じとりとした疑念が胸に広がる。脳裏に浮かんだ母のにこやかな顔は、どうにも信用ならなかった。

 けれどプロとしてここで投げやりになるわけにはいかない。透子はなんとか引き留めにかかる。
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