結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました
「交際はいい経験になっていますし、仕事にも生かせています」

「そう、ならよかったわ」

 当たり障りのない返事をする透子に、母は笑みを浮かべただけで、それ以上詳しく聞こうとはしなかった


 仕事を終え、家に帰り着いた透子はふらふらとベッドに近づき、うつ伏せに倒れ込んだ。

「……疲れたな」

 弱々しい声が、布団に吸い込まれる。

 あのあと、取り憑かれたように仕事をした。挽回しないと、今日の失敗を引きずってしまいそうだったから。でも、結局心は晴れないままだ。

『無責任なこと言わないで。そっちは仕事かもしれないけれど、こっちは一生がかかってるのよ!』

 香織の悲痛な声が耳の奥から消えない。

(明日は休みか。でも、どこかに出かける気にもならないな……)

 もう一度大きなため息をついていると、ベッドの脇に置いたバッグの中で、スマートフォンが振動する。通話の着信のようだ。

 起き上がって取り出し、画面に表示された相手を見た透子は思わず声を漏らす。

「え、迅さん?」

 毎日メッセージのやり取りをしているが、電話を受けるのは初めてだった。慌てて通話ボタンをタップする。

「もしもし」
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