結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました
 不意打ちで褒められて、透子の胸がトクンと跳ねた。

 今日の透子はシャツにワイドパンツ、スニーカーという動きやすい服装だ。とはいえ、デートなので、ラフすぎないような素材とデザインを選び、大ぶりのピアスと手首のバングルで女性らしさを出せるように意識した。

 大人っぽい見た目の透子は、〝かわいい〟と褒められた経験がなく、どう反応すればいいのかわからない。

(やっぱり上流階級の男性って、女性を褒めるのが礼儀で、あらゆる角度から褒めるスキルをお持ちなのね)

「ありがとうございます。迅さんも、いつも通りかっこいいです」

 動揺を悟られないように、とりつくろった笑みを返す。もちろん、お世辞ではなかった。

 街を歩く予定だから動きやすい服装でと伝えておいたのだが、無地のロングTシャツに軽やかな素材のジャケット、細身のパンツにレザースニーカーという装いは、カジュアルでありながら少しもだらしなく見えない。まさに〝上質なカジュアル〟のお手本のようだった。

「それはよかった」

 褒められ慣れているのか、迅は口の端を上げただけだった。

「で、今日はどこへ連れて行ってくれるんだ?」
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