結婚したくないはずの俺様社長に、成婚を強行されました
「あっちの方に見える船、大きくて立派ですね」

「あれはいわゆる豪華客船ってやつだ。横浜港に停泊するんだろうな」

 海に臨む柵に体を預け、ふたり並んで海を眺めながら他愛のない話を続ける。ときに会話が途切れたが気まずくはなかった。

 最初のデートでは沈黙が怖かったのに、今日は無言の時間も心地いい。

(よくお客様に、『無言が苦にならないお相手とは相性がいい証拠なので、結婚相手としておすすめです』なんてアドバイスしてるけど、こういう感じなんだろうな……あれ? じゃあ私も迅さんと相性いいってこと?)

 突然湧いて出た思考に透子は焦る。

(待って待って、私たちはあくまで今、〝仮の仮交際〟をしているだけであって、本当に結婚相手として見極めようとしてるわけじゃないから)

「あっ、そういえばうちのサロン、横浜にもあるんですよ。近くにあるパティスリーのマフィンが美味しくて、同僚が出張するときにはよく買ってきてくれるんです」

 妙な考えを振り払うように、透子は話題をふる。

「へぇ、カウンセラーも出張があるんだな」
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