冷徹営業トップは私の限界オタクでした

第25話「もう、『ちくわくん』と呼ぶのはやめます。 」

恋人になった翌日。
神崎は普段なら数分で決める服装に、今日だけは一時間以上かかっていた。

(陽菜子さんとの初デート……。)

映画へ行ったことはある。
二人で食事をしたこともある。
雨の日には相合傘までした。

だが、今日は違う。

(恋人としての、初デート……!)

神崎は鏡の前で顔を覆った。

「……無理だ。もう緊張してきた。」



そして、待ち合わせの時間――。

「ちくわくん、お待たせしました。」

待ち合わせ場所でそう声をかけてから、陽菜子はふと固まった。

――ちくわくん。

昨日までは何の違和感もなかった呼び方なのに。
恋人になった途端、少しだけ不思議に感じる。

神崎は、二人きりになると『春宮さん』ではなく『陽菜子さん』と呼んでくれる。」

(私だけ、ずっとちくわくんでいいのかな……?)

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