君と迎えるクランクアップ

ドリンクホルダーの落とし穴

「はい、これ差し入れ! aiharaさんからの特製タピオカミルクティーだって!」



翌日の撮影現場、休憩時間にRENが満面の笑みで差し入れのカップを配って回っていた。



もちろん、主演の優愛のところにもまっすぐRENがやってくる。



「ありがとう、RENくん。わざわざ持ってきてくれて」



「いいってことよ。ほら、今日のシーン寒かったからさ、甘いものでも飲んで温まって」



RENの気さくな態度に、現場のスタッフたちからも和やかな笑いが漏れる。



絵に描いたような爽やかな「主役カップル」の光景だった。



だが、それを少し離れた位置で見ている塁の胃は、激しくキリキリと痛み始めていた。



(あいつ、距離が近くね……? なんか優愛の肩に手が当たりそうになってるぞ……!)



「おい~、塁」



不意に声をかけられ、振り返ると、そこにはなぜかカップを二つ持った優愛が立っていた。



「なにぼーっとしてるの。ほら、これ、塁の分。はい!」



「……俺に?」



「うん。私、これ甘すぎて飲みきれないから半分こしてあげる。ストロー、こっち使う?」



優愛が差し出してきたのは、まさに今、彼女が手に持っていたミルクティーだった。



――同じストロー。いわゆる、間接キスというやつだ。



「い、いや、俺はいいよ。自分で買いに行くから」



「いいから持ってって言ってるの! ほら、もたもたしてるとRENくんが見てるよ」



「よけい見ただろ!」



小声で言い合いながらも、塁は渋々そのカップを受け取った。



だが、ストローに口をつけた瞬間、ほんのりと思い出す甘い香りと彼女の気配に、顔が一気に熱くなるのを感じた。



「ふふっ、顔真っ赤。熱あるの、マネージャーくん?」



悪戯っぽく微笑む優愛の顔が、いつもより何倍も近くに見える。



「うるさい。……で、さっきのRENとの話だけどな」



「えっ、なになに? 嫉妬しちゃった?」 「してねぇっての!」



ふたりでワタワタと言い争っている姿を、少し離れたところからRENが面白そうに眺めていることに、このときのふたりはまだ気づいていなかったのであった。
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