終わらない夜に

それからプールを楽しんだあとは、少し昼寝をしたり、近くの海岸を散歩したり……と楽しい時間を過ごした。

そしてあっという間に迎えた夜。
夕飯は庭でバーベキューということで、私は子供たち用に小さく切った肉や野菜を網で焼いていた。

「おにく!」
「熱いからね、ちゃんとフーフーして」

子供たちに配ったあとは名執さんのお皿にも配って、と繰り返していると、彼はふいに私の手からトングを奪う。

「あとは俺がやるから。つぐみも食べな」
「えっ、でも」

今日一日、子供たちの相手をしてくれていたのはほとんど名執さんだ。
食事のときくらい休んでもらえたらと思っていたけれど……名執さんは手早く焼くと肉や野菜を山盛りに持った皿を私に手渡した。

こんなふうに世話を焼かれるのも久しぶりで、ついおかしくて笑ってしまう。

「名執さんってば、こんなに食べられないですよ」
「確かに。盛りすぎたかも」

つられるように名執さんも笑った。そんな私たちを、冬馬はじっと見ている。

「あおいは、とーまたちのぱぱなの?」

不意に確信をつくようなことを聞かれ、心臓がどきりと跳ねる。

「ど、どうしたの冬馬。そんなこと聞いて」
「りくくんがね、ゆってたの。ぱぱじゃないのにいっしょにいるの、へんって!」
「ゆきともゆわれた!」

子供たちのあいだでそんな話が……。

血が繋がった親子であることには変わりないのに。
私たちの曖昧な形のせいで、子供たちを戸惑わせてしまっている。

心苦しく、なんて答えようか言葉を探していると、名執さんは少し考えてからふたりの前にしゃがみ頭を撫でた。

「パパだよ」
「え?」
「俺はふたりのパパだよ。今までそばにいてあげられなくてごめんね、でももうずっと一緒だから」

彼が否定せず事実をはっきりと伝えると、子供たちは少し驚いてから顔を見合わせてうれしそうに笑った。

「ぱぱ!」

声を合わせてよろこぶと、ふたりは手にしていたお皿をテーブルに置いて名執さんに抱きつく。
たくましい腕はふたり分の重さも簡単に受け止めて、頬を寄せて抱きしめた。

子供たちが彼を「パパ」と呼んで抱きついている、こんな景色が見られるなんてついこの前まで思わなかった。

なんて幸せな光景なんだろう。
うれしさに涙が出てしまうのを3人に見られないように、背中を向けてごまかした。


 
< 35 / 50 >

この作品をシェア

pagetop