終わらない夜に
それから数時間と経たずに子供たちはぐっすりと眠ってしまった。
庭から大きな窓越しに見えるベッドで眠るふたりを見て、バーベキューの片付けを終えた私たちは、夜風にあたりながら大人だけの時間を過ごしていた。
ふたりがけのベンチに座り、手元のグラスに注がれたシャンパンをひと口飲むと、久しぶりのアルコールが舌先に染みる。
「今日は一日お疲れさまでした」
「つぐみもね。少しは気分転換になったかな」
「はい、とっても。それに子供たちがよろこんでくれたのがなによりもうれしいです」
笑って話してひと息つくと、会話が途切れた。
今ここでこの前の告白についてきちんと話すべきなんだろう。
だけどいざこうしてふたりきりになるとなにを言っていいかわからなくて、緊張をごまかすように顔を上げた。
すると、頭上の夜空にはたくさんの星が散らばっていることに気がついた。
「名執さん、見てください。すごい星空」
「本当だ。今日天気よかったのもあってよく見える」
丘の上には建物がなく、ここ以外に明かりもないためか星の輝きがよく見える。
私と同じように空を見上げて、名執さんはうれしそうに顔をほころばせた。
「よかった、こうして星が見られて。昔、いつか一緒にキャンプ行って星を見ようって話してたの、叶えられたね」
それは、4年前のデート中の会話のひとつ。
ほんの些細ななにげない会話も、その胸に残っていたのだと知りうれしくなる。
「覚えてたんですか?」
「もちろん。離れていた間も星を見るたびつぐみを思い出して、今どうしてるだろう、笑ってるか、幸せか、ずっと考えてた」
私が空を見て名執さんのことを思い出していたように、彼も胸に私を思い描いてくれていた。
まるで心がつながっているかのよう、なんて思うと、小さく触れる肩が熱くなる。
「……でも、名執さんほどの人なら他にも女性はいましたよね。縁談とかもあったんじゃないんですか?」
「まぁ、嫌でも親や周りが縁談を持ってくるからね。正直、お見合いも何度かした」
お見合い……。
彼に相応しい家柄の相手を見つけて勧めていたであろう、名執さんのお母さんの姿が想像ついて胸がチクリと痛んだ。
「じゃあそういう人を選んだ方がいいんじゃないですか。身元もしっかりしていて仕事でのメリットもありますし……お母さんだって、きっとよろこぶでしょうし」
こんな言い方したくないのに。まるで八つ当たりのような言い方をしてしまったことに後悔する。けれど、言葉はすでに口から出たあとだ。
けれど名執さんはそんなふうに言われても嫌な顔ひとつせず、むしろ納得したように困った笑顔を見せた。
「つぐみが黙っていなくなった理由がなんとなくわかった。どうやって接触したかは知らないけど、俺の母親がなにか言ったんでしょ」
彼がそう言い当ててしまうということは、もしかしたら過去にも似たことがあったのかもしれない。
恐らく自分の母に対して呆れたようにため息をつくと、名執さんは手にしていたグラスを目の前のテーブルに置く。
そしてこちらへ手を伸ばすと、ぐいっと体を引き寄せて、まるでお姫様抱っこのような形で私を膝の上に座らせた。
「わっ……」
彼の固い胸としっかりとした腕に包まれ、ついさっきまでの拗ねたような気持ちがどこかへ吹き飛んでしまう。