喪失の夜に、あなたがいた
翌朝。
 病室のカーテン越しに柔らかな光が差し込んでいた。

明莉はゆっくりと目を開け、少しだけ上体を起こした。

まだ痛みはある。
 けれど、昨日よりもずっと表情が穏やかだった。

楓はその変化に気づき、
 胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じた。

「……明莉さん、痛みはどうですか」

声はいつもより少しだけ震えていた。

「うん……昨日よりは、だいぶ楽です」

その言葉に、
 楓はほっと息を吐いた。

その仕草が、
 あまりにも優しくて、あまりにも必死で──

胸がきゅっと痛んだ。

しばらく沈黙が続いた。

楓は何度も言葉を探し、
 何度も飲み込んだ。

契約。
 義務。
 責任。
 佑輔。

そのすべてが、
 楓の胸を締め付けていた。

でも──
 昨夜、自分の心を認めた。

もう逃げられない。
 逃げたくない。
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