喪失の夜に、あなたがいた
「楓さんの隣に立つべきなのは……
 私なの……!
 あの子じゃない……!私が楓さんにはふさわしい人間なのよ」

机を叩く音が響く。

刑事は眉ひとつ動かさず、淡々と続けた。

「あなたは明莉さんに対して、
 複数の誹謗中傷を投稿し、
 噂を流し、
 現場にまで向かった。
 これは“偶然”ではありません」

「違う……違うの……!
 私は……ただ……楓さんを助けたかっただけ……!」

その言葉は、
 誰にも届かない。

玲奈の声は震え、
 呼吸は乱れ、
 指先は机を掴んだまま白くなっていた。

その姿は、
 もう“理性”という言葉から遠く離れていた。

刑事が静かに告げた。

「白石玲奈。
 あなたの罪は重い。逮捕されますよ」

その瞬間、
 玲奈の表情が崩れた。

「やだ……やだ……!
 楓さんに会わせて……!
 楓さんに……!楓さんならわかってくれるから」

叫びは取り調べ室に響いたが、
 誰も反応しなかった。

玲奈の世界は、
 もう誰にも届かない場所へ落ちていた。
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