喪失の夜に、あなたがいた
拘置所の簡易ベッドに座らされると、
 玲奈は膝を抱え、ゆっくりと揺れ始めた。

その揺れは、まるで自分を落ち着かせるための儀式のようだった。

(……どうして……どうしてあの子なの……)

心の奥で、
 小さな声が何度も繰り返す。

その声は、
 玲奈がずっと隠してきた“本音”だった。

玲奈の心が壊れ始めたのは、
 ずっと前──
 幼い頃から「完璧」を求められて育った時期だった。

社長令嬢として、何でも手に入る環境。

けれど、
 家族の愛情は薄く、
 褒められるのは「結果」だけ。

テストで満点を取れば褒められ、
 失敗すれば冷たく叱られる。

その繰り返しが、玲奈の心に“選ばれたい”という強迫観念を植え付けた。

(……選ばれなければ、価値がない……)

その価値観は、
 大人になっても変わらなかった。
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