喪失の夜に、あなたがいた
包帯が巻かれた頭。
 少しだけ青ざめた頬。
 呼吸器の音が規則的に響く。

その姿は、
 あまりにも痛々しかった。

楓はゆっくりと近づき、
 明莉の手をそっと握った。

冷たかった手は、
 少しだけ温度を取り戻していた。

「……明莉さん」

名前を呼ぶ声は、
 涙で濡れていた。

「僕は……あなたを守れなかった。
 でも……これからは違います」

楓は明莉の手を胸に当てた。

「あなたが目を覚ますまで……
 僕はずっとそばにいます。
 離れません」

その言葉は、
 誰に向けたものでもなく、
 ただ明莉に届くことだけを願った誓いだった。

さくらが静かに言った。

「楓。
 あなたはあの子を愛しているのね」

楓はゆっくりと頷いた。

「……はい。
 僕は……明莉さんを……」

言葉が震えた。

「……愛しています」

その瞬間、
 楓の胸の奥で何かが静かに形を持った。

痛みでも、恐怖でもない。

ただ──
 明莉を守りたいという、
 揺るぎない想いだった。



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