白い結婚で捨てられた王妃は、「あなたのために王になります」と言った義弟の手を取る
一月後。
「大変です! 陛下。アルヴェリアから条約破棄の連絡がきました!」
王宮にあるクラウスの執務室の扉を、血相を変えた中年の外務大臣が派手な音と共に開く。
「きゃっ」という声を上げたカーラが慌てて胸元を押さえながら、クラウスから離れる。慌てて執務室を出て行った。
無事に正妃となったカーラとの癒やしのひとときを邪魔されたクラウスは、ご機嫌斜めだった。部屋の前を守る騎士には誰も入れるなと言付けておいたはずなのに。
「それで大臣、一体何の用だ?」
不機嫌さを隠さずにクラウスは尋ねる。外務大臣はごほんと咳払いをすると言った。
「アルヴェリアから条約破棄の連絡がきたのです」
「アルヴェリアから? 何故だ? こちらにはセレスティーヌがいるだろう」
クラウスがもらい手もないみそっかす王女であるセレスティーヌを引き取った見返りとして結んでもらった条約だ。この条約があるので、小国であるヴァルディスが周辺諸国から守られている。まあ、この美しいクラウスに、あんな地味な王女を押しつけてきたのだから、これくらい当然だろう。
母が生きていたら、絶対に止めたはずだ。常にクラウスのことを美しいと褒めそやしてくれた母。隣に立つ令嬢も美しくないと、といつも言っていた。
ようやくカーラというクラウスにふさわしい令嬢を隣に迎えることが出来て、母も天国で喜んでいるだろう。
「アルヴェリア王は、陛下のセレスティーヌ様への扱いに大層ご立腹です」
(離宮が気に食わないから、告げ口したのか?)
「わかった。あとで離宮にいってあいつの機嫌をとってやろう」
はあと、クラウスはため息をついた。面倒くさいが、アルヴェリアとの条約は国にとって大切なのは理解している。
外務大臣は何かを言いたげな顔をしたが、クラウスがひとにらみすると、そそくさと部屋を出て行った。
(まったく、本当に役に立たない女だ)
ああ。ふわふわのカーラに癒やされたい。
そんなことを思っていると、今度は交易部門の長である伯爵がやってくる。
「陛下。先日申請した交易の書類はどうなっているかという確認が来ております。このままだと交易ルートが止まります」
「はあ? それはレオンハルトの仕事だろう」
国王たる者、下の者をうまく使ってこそだ。
幼い頃から、母にそう教育されてきた。
交易ルートは大事だ。だからこそ、血を分けたレオンハルトに任せてやっていた仕事なのだが。
「それが、レオンハルト殿下はご自身が治める直轄地で問題が起こったとのことで、なかなか王宮の方に来られないそうです。さすがに王族の方が確認しないといけない書類は、私のほうではどうにもならず……」
(まったく役に立たないやつだな)
ちっとクラウスは舌打ちをする。領地一つ治められない無能が。仕事を任せられている責任感もないと来た。
「直轄地に持っていけばいいだろう」
「王宮外に持ち出してもかまわないのですか」
「ああ。私が許可する」
「承知いたしました。一応念のため、その旨紙に残していただいても?」
面倒くさいと思ったが、クラウスは伯爵がさらっと書いた紙にさらさらとサインをする。
伯爵は一礼すると去って行った。ほうっと一息つく間もなく、別の人間が次の問題を運んでくる。
次にやってきたのは外務系の仕事をしている文官だった。
「申し訳ありません。この書類にサインをいただけませんか?」
「サインだな」
「確認しなくてもよいのですか?」
目を通さずにペンを持とうとしたクラウスに、文官が尋ねてくる。
「お前たちが確認しているのだろう?」
にらみつけてやれば、文官が「はい!」と勢いよく姿勢を正した。
クラウスはそのままさらさらとサインをすると、文官に押しつけた。
その後も、ひっきりなしに部下たちがやってきて、仕事が滞っている話をしては去って行く。
そんな誰でもできる仕事はクラウスの管轄下ではないというのに。
(早くセレスティーヌの機嫌をとらねばならぬのに)
夕方近く。ようやく時間ができたクラウスはセレスティーヌが住む離宮へ足を運ぶ。
セレスティーヌは愛に飢えているはずだから、適当に甘い言葉を投げて微笑みかければ機嫌を直すだろう。サービスでキスの一つくらいしてやってもいいかもしれない。アルヴェリアとの条約のためなら安い物だ。
そんなことを思いながら離宮へとたどり着き、クラウスは驚愕の事実を知る。
「はあ? セレスティーヌは王宮を出て行っただと!?」
「大変です! 陛下。アルヴェリアから条約破棄の連絡がきました!」
王宮にあるクラウスの執務室の扉を、血相を変えた中年の外務大臣が派手な音と共に開く。
「きゃっ」という声を上げたカーラが慌てて胸元を押さえながら、クラウスから離れる。慌てて執務室を出て行った。
無事に正妃となったカーラとの癒やしのひとときを邪魔されたクラウスは、ご機嫌斜めだった。部屋の前を守る騎士には誰も入れるなと言付けておいたはずなのに。
「それで大臣、一体何の用だ?」
不機嫌さを隠さずにクラウスは尋ねる。外務大臣はごほんと咳払いをすると言った。
「アルヴェリアから条約破棄の連絡がきたのです」
「アルヴェリアから? 何故だ? こちらにはセレスティーヌがいるだろう」
クラウスがもらい手もないみそっかす王女であるセレスティーヌを引き取った見返りとして結んでもらった条約だ。この条約があるので、小国であるヴァルディスが周辺諸国から守られている。まあ、この美しいクラウスに、あんな地味な王女を押しつけてきたのだから、これくらい当然だろう。
母が生きていたら、絶対に止めたはずだ。常にクラウスのことを美しいと褒めそやしてくれた母。隣に立つ令嬢も美しくないと、といつも言っていた。
ようやくカーラというクラウスにふさわしい令嬢を隣に迎えることが出来て、母も天国で喜んでいるだろう。
「アルヴェリア王は、陛下のセレスティーヌ様への扱いに大層ご立腹です」
(離宮が気に食わないから、告げ口したのか?)
「わかった。あとで離宮にいってあいつの機嫌をとってやろう」
はあと、クラウスはため息をついた。面倒くさいが、アルヴェリアとの条約は国にとって大切なのは理解している。
外務大臣は何かを言いたげな顔をしたが、クラウスがひとにらみすると、そそくさと部屋を出て行った。
(まったく、本当に役に立たない女だ)
ああ。ふわふわのカーラに癒やされたい。
そんなことを思っていると、今度は交易部門の長である伯爵がやってくる。
「陛下。先日申請した交易の書類はどうなっているかという確認が来ております。このままだと交易ルートが止まります」
「はあ? それはレオンハルトの仕事だろう」
国王たる者、下の者をうまく使ってこそだ。
幼い頃から、母にそう教育されてきた。
交易ルートは大事だ。だからこそ、血を分けたレオンハルトに任せてやっていた仕事なのだが。
「それが、レオンハルト殿下はご自身が治める直轄地で問題が起こったとのことで、なかなか王宮の方に来られないそうです。さすがに王族の方が確認しないといけない書類は、私のほうではどうにもならず……」
(まったく役に立たないやつだな)
ちっとクラウスは舌打ちをする。領地一つ治められない無能が。仕事を任せられている責任感もないと来た。
「直轄地に持っていけばいいだろう」
「王宮外に持ち出してもかまわないのですか」
「ああ。私が許可する」
「承知いたしました。一応念のため、その旨紙に残していただいても?」
面倒くさいと思ったが、クラウスは伯爵がさらっと書いた紙にさらさらとサインをする。
伯爵は一礼すると去って行った。ほうっと一息つく間もなく、別の人間が次の問題を運んでくる。
次にやってきたのは外務系の仕事をしている文官だった。
「申し訳ありません。この書類にサインをいただけませんか?」
「サインだな」
「確認しなくてもよいのですか?」
目を通さずにペンを持とうとしたクラウスに、文官が尋ねてくる。
「お前たちが確認しているのだろう?」
にらみつけてやれば、文官が「はい!」と勢いよく姿勢を正した。
クラウスはそのままさらさらとサインをすると、文官に押しつけた。
その後も、ひっきりなしに部下たちがやってきて、仕事が滞っている話をしては去って行く。
そんな誰でもできる仕事はクラウスの管轄下ではないというのに。
(早くセレスティーヌの機嫌をとらねばならぬのに)
夕方近く。ようやく時間ができたクラウスはセレスティーヌが住む離宮へ足を運ぶ。
セレスティーヌは愛に飢えているはずだから、適当に甘い言葉を投げて微笑みかければ機嫌を直すだろう。サービスでキスの一つくらいしてやってもいいかもしれない。アルヴェリアとの条約のためなら安い物だ。
そんなことを思いながら離宮へとたどり着き、クラウスは驚愕の事実を知る。
「はあ? セレスティーヌは王宮を出て行っただと!?」