桃と伊吹の、ドキドキ♥️ナゾトキFile
【ナゾトキ】

書き換えられ、貼り替えられていたのは、一年生の名前が書かれた作品が一つ、二年生の作品が二つ。

しかも、書道の先生が指導用に使う『朱墨』で上手に書かれていて、すごく目立つ。

元の作品は、廊下の隅に設置されている戸棚の上に置いてあったのを一緒に駆けつけた生徒会の役員メンバーが発見した。

「僕は、小学五・六年の時に書道教室に通っていてね、同い年で、すごくうまい奴がいたんだけど……そいつの字にすごく似ている。三つとも」伊吹君がつぶやいた。

「ひょっとしてその子、この中学にいるの?」
もしそうなら、私とも同じ学年だ。

「ああ、三組の石田だ……でも最近、学校に来ていないらしい」
「ええ? じゃあその子、隙を見て、わざわざ自分で書いたのと貼り替えたってこと?」
なぜそこまでして?

「どうやら、石田君と被害を受けた三人、共通点があるようだな……同じ部活に所属している」
遅れて来た葉月会長が新情報をもたらした。

「葉月姉さんは、この四人の関係と今回のことをどう考えています?」
弟にそう聞かれ、会長さんは顎に親指を当てて答えた。
「そうだな、石田君は学校を休んでいる、三人の作品は彼にネガティブに書き換えられている……どうやらこの三人からイジメを受けていたのではないかな」

それを聞いて私が思ったことを言っておきたかった。
「石田君……わざわざ目立つように朱色の墨で書き替えています。字の特徴や所属している部から、誰の仕業かすぐにわかってしまうのに……よっぽど強く訴えたかったんじゃないかと思います……ある意味、『捨て身の覚悟』で……それほど辛かったんじゃないかなと思います」

「桃君の言う通りだろうな……ところでこの件、君はどうしたらいいと思う?」

私は目を閉じて、昔の自分の過ちを思い出す……そして、正直な気持ちを伝えた。
「いじめの問題は、正直私にはどうしたらいいか、わかりません。でももう、これ以上犯人捜しや、それを大っぴらにすることはやめた方がいいと思います」

「その通りだな……やはり桃君を生徒会兼ミステリー部に誘って正解だったな。石田君を追い詰めてはいけない。この部を作った目的は、犯人捜しのためではなく、『この学校を素敵な場所にするため』なのだから」
そう言うと、葉月先輩は、そこに集まっていた生徒会役員メンバーを見渡した。

「みんな、この件は内密にしておいてくれ。ワタシから生活指導の池井先生に事情を話して相談する。学校で解決してもらう」

「会長、わかりました」
伊吹君が力強く答え、棚の上に置かれていた三人の元の作品を手に取った。

「これを貼り直そう……誰か手伝ってくれますか?」
彼の頼みに、背の高い副会長さんと会計の男子生徒が応え、習字の作品は元に戻された。
こういう所だよね……伊吹君の魅力。

ミステリー小説っぽいのを書いて投稿している私が言うのもなんだけど、
『謎解かない。解いても、そっとしておく』……それが正しい選択の場合もあるんだと思う。
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