桃と伊吹の、ドキドキ♥️ナゾトキFile
【ナゾトキ】
混乱する頭の片隅で、この間見た夢を思い出していた。
シーン:学習塾の教室。
小学校三年生に進級し、同じクラスになったタマに誘われて、私は駅前の学習塾に通い始めた。
私の席の前に座っているのは彼女。
後ろの席には、ほかの小学校の男の子。
「それ、かわいいね」
不意にその男の子が声をかけてきた。
振り向くと、その子は私のペンケースをじっと見つめている。
それは、全体、黒猫の形をしていて、背中にファスナーで開け閉めできる。
耳とヒゲがついた可愛い顔、お尻にはシッポもついている。
「ありがとう。三年に進級したとき、お母さんが買ってくれたの」
「僕もそういうの、欲しいな」
「え、男子なのに?」
「えー、ペンケースの好みに男子も女子もないよ」
そんな話をしたのを憶えている。
次の塾の日。
最初の授業が終わって、トイレから帰ると、
……ない。黒猫のペンケースが!
「ねえタマ、私のペンケース、知らない?」
「さ、さあ……あ、後ろの男の子がいじってたかも」
それを聞いて、ノートに何か書いていた男の子が顔を上げ、私を見た。
「ねえ、返して……私の黒猫君」
「あ、勝手にごめん。でも、ちょっと見せてもらって、すぐに机の上に戻しておいたよ」
「私の机の上、なんにもないよ」
この間、男の子が「僕もそういうの、欲しいな」と言っていたのを思い出した。
「あっ、何するの!」
私は、男の子の机の横にかけてあるトートバッグを開けた。
バッグの中にペンケースは無かったけど、私の使っていたピンク色の消しゴムが転がっていた。
「ほらね……黒猫君はどこにやったの? 早く返して」
男の子は、私の前の席で話を聞いていたタマの顔を見て、少し困った顔をして言った。
「本当に僕は知らないよ……盗っていない」
「じゃあ、状況を整理してみるからね。
・黒猫のペンケースがなくなった
・君がいじっていたとの目撃情報がある
・君のトートバッグに私の消しゴムがあった
……これで誰が犯人かわかったでしょ! さあ、返して!」
ちょっと得意げに、大きな声を出してしまった。
周りの席にいた子が、何事かとこっちを見ている。
そうしているうちに講師の先生が入ってきて、テキストを開くようにと言った。
私は筆記用具なしで、理科の講座を受けた。消しゴムだけでは何もできなかった。
授業が終わって、私が声をかけようと思った時には、すでに男の子は部屋にいなかった。
〇
伊吹君は、生徒会室のテーブルに置いてあった黒猫のペンケースを取り上げ、私の両手に持たせた。
ファスナーを開けると、キャップのついた鉛筆が三本、シャーペンと赤いボールペンが一本ずつ、それから三色のマーカーが入っていた。消しゴムはなく……入っている文房具は多分、あの時のままだ。
「い……伊吹君だったの? あの塾で、私の後ろの席の子、それから……」
「うん……そうだよ……その通り……僕が盗った」
悲しい結論。
こんなの、推理でも謎解きでもなんでもない。
混乱する頭の片隅で、この間見た夢を思い出していた。
シーン:学習塾の教室。
小学校三年生に進級し、同じクラスになったタマに誘われて、私は駅前の学習塾に通い始めた。
私の席の前に座っているのは彼女。
後ろの席には、ほかの小学校の男の子。
「それ、かわいいね」
不意にその男の子が声をかけてきた。
振り向くと、その子は私のペンケースをじっと見つめている。
それは、全体、黒猫の形をしていて、背中にファスナーで開け閉めできる。
耳とヒゲがついた可愛い顔、お尻にはシッポもついている。
「ありがとう。三年に進級したとき、お母さんが買ってくれたの」
「僕もそういうの、欲しいな」
「え、男子なのに?」
「えー、ペンケースの好みに男子も女子もないよ」
そんな話をしたのを憶えている。
次の塾の日。
最初の授業が終わって、トイレから帰ると、
……ない。黒猫のペンケースが!
「ねえタマ、私のペンケース、知らない?」
「さ、さあ……あ、後ろの男の子がいじってたかも」
それを聞いて、ノートに何か書いていた男の子が顔を上げ、私を見た。
「ねえ、返して……私の黒猫君」
「あ、勝手にごめん。でも、ちょっと見せてもらって、すぐに机の上に戻しておいたよ」
「私の机の上、なんにもないよ」
この間、男の子が「僕もそういうの、欲しいな」と言っていたのを思い出した。
「あっ、何するの!」
私は、男の子の机の横にかけてあるトートバッグを開けた。
バッグの中にペンケースは無かったけど、私の使っていたピンク色の消しゴムが転がっていた。
「ほらね……黒猫君はどこにやったの? 早く返して」
男の子は、私の前の席で話を聞いていたタマの顔を見て、少し困った顔をして言った。
「本当に僕は知らないよ……盗っていない」
「じゃあ、状況を整理してみるからね。
・黒猫のペンケースがなくなった
・君がいじっていたとの目撃情報がある
・君のトートバッグに私の消しゴムがあった
……これで誰が犯人かわかったでしょ! さあ、返して!」
ちょっと得意げに、大きな声を出してしまった。
周りの席にいた子が、何事かとこっちを見ている。
そうしているうちに講師の先生が入ってきて、テキストを開くようにと言った。
私は筆記用具なしで、理科の講座を受けた。消しゴムだけでは何もできなかった。
授業が終わって、私が声をかけようと思った時には、すでに男の子は部屋にいなかった。
〇
伊吹君は、生徒会室のテーブルに置いてあった黒猫のペンケースを取り上げ、私の両手に持たせた。
ファスナーを開けると、キャップのついた鉛筆が三本、シャーペンと赤いボールペンが一本ずつ、それから三色のマーカーが入っていた。消しゴムはなく……入っている文房具は多分、あの時のままだ。
「い……伊吹君だったの? あの塾で、私の後ろの席の子、それから……」
「うん……そうだよ……その通り……僕が盗った」
悲しい結論。
こんなの、推理でも謎解きでもなんでもない。