この恋、上方修正銘柄です!

「四井物産の財務分析終わった?」
「すみませんまだです。整合性が取れなくて」
 どこ?という風に、九条が隣から覗き込む。
「ここの数字が違う」
「あ、そうか」
「あと、実数分析だと規模の違う同業他社との比較がしづらいから、比率分析もつけて」
「ROEとROAの算出は済んでます。収益性や安全性の比率もまとめますか?」
 差し出した資料を九条が受け取ったところで、正面の席からこっちをじっと見ている船岡に気付く。
 九条が小声で、
「もしかして俺、今、距離感バグってる?」
「わ、分かんない」
 また何か言われるのかと二人して身構えていると。

「九条さーん!」
 今日の預金課は珍しく定時に終わったらしい。
 富小路、北川、竹田、その他諸々が協定でも結んだのか、皆で都市再生チームのブースに押しかけて来た。
「今週末こそ飲みに行きますよ!結局一度も実現しないまま、もう7月じゃないですか」
「週末難しそうなら、行けそうな日指定しちゃってください!日程、全力で合わせに行きます。あ、高辻さんも良かったら」
 明らかに社交辞令なので曖昧に濁しておく。そんなことより、九条は何と答えるだろうと思っていると。

「ごめん。俺、彼女できたんだ。だから悪いけど、やめとく」
「「「えーー!!」」」
「もも、もしかして、うちの行員ですか?」
「同じ高校だった子。十年ぶりに再会して、向こうも好きだったって分かって、それで」
 照れながらそう言った九条にはキラキラのエフェクトがかかっていて。その破壊力たるや、女子たちが卒倒しそうになっている。

 未だかつて、誰かと付き合ってこんな嬉しそうな顔をする九条を見たことがあっただろうか。


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