この恋、上方修正銘柄です!
「デベロッパーやゼネコン、行政や地元の地権者。異なる利害関係者が関わる分、意思統一が図りにくい。それぞれの意見を擦り合わせ、支店と連携しながら支援していって欲しい。じゃあ、各自の進捗状況を聞く。まずは東山から」
一瞬で場の空気が変わり、全員の顔つきが引き締まる。
「施工者及び特定事業参加者の4月末残高試算表を送ってもらいました。パソコンの共有ドライブからファイルを開いてください。まずは光菱地所から」
船岡に教えてもらいながら該当書類を開く。
「4月の損益はプラス20%、但し、増収以上に売上原価が増加しています。理由は資材不足による材料費の高騰のためで、今後も続くと予想されます。次にフリーキャッシュフローですが……」
飛び交う専門用語は融資課でも聞き慣れたものだったが、とにかく会話のテンポが早い。
「志水、シンジケートローンの方は」
「先方はコミットメント期間付タームローンを希望されています。クラブシンジケーションか、ジェネラルシンジケーションにするかはまだ検討中とのこと。数日中にマンデートレターを提出してもらいます」
「了解。金融機関に対するヒアリングとローンチも同時に進めてくれ」
「来週までにはコミットレターを獲得したいと考えてます」
「金融機関との交渉、契約条件のとりまとめについては、東山がフォローに入るように」
「了解です」
と、向かい合う東山と志水がアイコンタクトを交わす。
「では、エリアマネジメントの取組みについて。船岡」
「道路占用許可の特例により、歩道空間を活用したオープンカフェの実施が可能となったため、飲食店舗誘致に動く予定です」
「早い段階から担当エリアの渉外チームと連携を取って動くこと。数が多いから絶対に一人では抱えるな」
「承知しました!九条さんって、戦略と現場の実行の行き来がめちゃくちゃスムーズですよねー。さっすがアベル」
「褒めても今日の昼メシ代には還元されないからな」
「ちぇ〜、ワンチャン狙いは不発か……」
立ち上がったばかりのチームとは思えない息の合った連携に、疾走感のある進捗。皆GW返上で仕事をしていたのかもしれない。
「それと明日の午後、経営幹部会議で合同庁舎跡地再生プロジェクトのプレゼンをすることになった。悪いがみんな、こっちを優先で頼む」
「了解です」
それぞれに指示を出した後、九条がこちらを見て、思わず背筋が伸びる。
「早速だけど、明日の会議のアジェンダ作成を頼む。それが出来たら、デベロッパー各社の債務概況表と財務資料をまとめてほしい。雛形は共有フォルダに入ってるものを使って。完成したら俺のアドレスまで。分からないことがあれば遠慮なく聞くこと。あと、当日は議事録係もよろしく」
「は、はい!」
「以上でミーティングは終了」
声と同時に皆それぞれの仕事に動き出す。
錦もノートPCを開き、データの作成に取りかかった。