この恋、上方修正銘柄です!

 シャッターが閉まる音で、15時になったことに気付く。ここの仕事は窓口の忙しさに左右されないので、同じ店なのに別の時間の流れの中にいるみたいだ。

 東山達はまだ帰って来ない。次の書類に取りかかろうとして、ふと手が止まる。
 電話を終えた九条が、そんな錦に気付いて声を掛けた。
「どうかした?」
「自己嫌悪に陥っているだけです。自分が無能過ぎて。何、マンデートレターとかローンチって……」
「俺も前にコンサルで入ってた金融機関で組成したことがあるから分かるだけ。高辻ならすぐ慣れるよ。さっきの書類も完璧だったし」
 参考までに、とシンジケートローン関連本を渡されて、お借りしますと礼をしながら、
「数字を入力するくらい誰にでも出来ます。財務分析についても単に数字を追っているだけで、実際どこまで理解しているかと聞かれれば答える自信がありません」
「負けず嫌い」
「え?」
「言われない?」
「……言われます」

 九条はハハッと笑うと、手に持っていたペンを器用にくるっと回して、
「東山と志水と船岡。営業推進部にいるメンバーの中から、俺が選んだ。資格云々は別にして、面白そうな奴らだなあって思ったから。高辻を指名したのも同じ理由。こう見えても人を見る目はあるから大丈夫。ありがとな、ウチのチームに来てくれて」
 自信に満ちた笑顔で爽やかに言われて、
「いえ……こちらこそ、ありがとうございます」

 九条姓の男は皆、人たらしの素質があって、ペンを回すのが上手いらしい。

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