この恋、上方修正銘柄です!

 結果、3人仲良く1列に並び、駅までの明るい道を歩く羽目になる。 
 先程から両端の者による会話が、主に真由子からの質問形式で繰り広げられている。

 自分を真ん中に挟まずに話してくれれば良いのにと思っている錦の心中など、やはり微塵も気にかけない様子で、
「九条さんのカラオケ、聞いてみたかったなー。どんな曲、歌うんですか?」
 10年のブランクがあるから、と挙げられたタイトルは、当時九条吏もカラオケでよく歌っていた曲で、しかも無駄に上手かったことを思い出す。
「そうだ、MBAスクールの話、聞きたいです!」
「もしかして新町さん、興味あるの?」
「とんでもない!お金も気力もないし、年齢的にも今更って感じだし」
「ミシガン・ロススクールのメンバーは社会人経験者の30代が多かったよ。俺は大卒からの入学だったから最年少だったし」
「でも確か、資格取得には企業での実務経験が要るんですよね」
「よく知ってるね。スクールがあるアナーバーには日本でも有名なピザ屋の本社があるんだけど、そこで働いてたから、その辺の経験を考慮してもらえたんだ」
 
 そういえば、九条もピザ屋でバイトをしていたような。

「良いなあ錦は。こんな素敵な人と一緒に仕事が出来て羨ましい~」
「そんな風に言って貰えて光栄だな」
 ぽわーんとした表情で九条を見ていた真由子だったが、急に錦に詰め寄ると、
「アンタね、いつまで昔の男引きずってんのよ」
「ち、ちょっと、なに?急に変なこと言い出すの、ホントやめてよ真由!」
「この子、お酒飲んでも全然変わらないんですけど、前に一度珍しく酔っ払ったことがあって、その時に言ってたんです。高校時代に好きだった人のことが今もずーっと心に残ってる。その彼よりも好きになれる人にはもう出会えないから、きっと私は一生独身だって」
「ウソ、私、そんなこと言った!?」
「言った言った、めっちゃ覚えてるもん」
「全く記憶にないんだけど……」

 普段常にそんな風に考えている訳ではない。
 とはいえ、全く心当たりがないかといえばそうでもない。
 お酒って怖い、と反省していると。

「真面目でストイックだから誤解されやすいけど、根はとっても良い子なんです。お世辞も言わないけど人の悪口も言わないし。だから九条さん、どうぞよろしくお願いします!」
 そこそこ長い付き合いになるが、真由子のお節介スイッチがどういうタイミングでオンになるのか未だにさっぱり分からない。 
「類は友を呼ぶって言うから、きっと新町さんも良い子なんだね」
 そう言って笑った顔に、ぽーっとみとれた真由子が、ぼそりと呟いた。
「私、九条さんと付き合えるなら旦那捨てるわ」
 新婚が何言ってんだか、と溜息をついた。

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