この恋、上方修正銘柄です!

 トイレに行こうと部屋を出た廊下で、長身の男とぶつかりそうになる。
「す、すみません」
「いえ、こちらこそ。って、あれ、高辻?」
 目の前にいたのは九条で、錦が何か言う前に、後ろからついて来ていた真由子が、
「きゃっ、噂をすればなんとやら!九条さんですよね!私、錦と同期の新町真由子と言います。人事部でーす!」 
 同期の中でも群を抜いてコミュ力が高い真由子が、その力を遺憾なく発揮し始めた。

「今日は同期で集まってて、ここが2件目なんです。九条さんは?」
「渉外課の醒ヶ井課長とブロック会議に出たんだけど、皆で飲みに行く流れになって」
「邦銀のお付き合い、大変でしょう?」
「いや、そうでもないよ。皆、良い人だし。けど、そろそろ帰ろうと思ってたとこ」
「あ、じゃあ駅までご一緒しても良いですか?私達も帰るところなので」

 そんなこと一言も言ってなかったのに、と非難の視線を向けたが、真由子の全神経は九条に注がれていて錦のことなど眼中にないらしかった。

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