この恋、上方修正銘柄です!

 昼休み。生徒の少ない教室でプリントを配布している時、九条がふらりとやって来て、
「毎日毎日、文句も言わんと斉藤の小間使いご苦労さん」
と、錦の手元にある1枚をひょいと奪うと、
「げ、何やねんコレ。保護者宛の進路相談の案内やなんて、聞いてないで、俺」
「二学期の最後に三者面談があるって、斉藤先生、前に言ってたじゃない」
「どうすんねん、親父とは絶交中やのに」
「絶交中って……反抗期?お母さんは来られないの?」
「ああ、言ってなかったっけ。母親は他界して、俺、父子家庭」
 え、と言葉を詰まらせた錦に、
「気にすんな。ってゆーか、実家、大阪やし。そもそも新幹線乗って来るほどのもんか?」

 九条は手近な机に腰掛けると、再び紙面に目を落とした。
「お、この日程、ちょうどシンガポールに出張中やな」
「海外出張なんてあるんだ」
「自分でやってる会社やからな。好き勝手してるんちゃう?知らんけど」
「もしかして、経営者志望はお父さんの影響?」
「ちょ!声がでかい!」
 周囲を見回し、誰かに聞かれてないことを確認してから、
「違う、って言いたいとこやけど……反面教師っつーか?家庭を顧みん親父見て、オレやったらこんな親にはならへん、みたいなのはあるかもな」

 と、同じクラスの男子が教室の入り口から、
「九条、客ー!」
 見ると廊下に二人組の女子がいて、可愛くて背の低い方がぺこりと頭を下げた。その背後から、担任の斉藤が顔を覗かせて、
「高辻、ちょっと頼まれてくれるか」
 かたや女子に呼ばれる軟派男と、かたや担任に用事を押し付けられる学級委員。この差は一体何なのだろうと内心溜息をつきつつ、錦はハイと返事をした。

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