この恋、上方修正銘柄です!

 ホテルの一室にふたりきり。
 いつもならうるさい位よく喋る九条がさっきから黙ったままで、それがまた居心地の悪さに拍車をかけている。

 不意に蘇る、九条の言葉。
―――「大人の男と女がホテルでやることっていうたら、決まってるやろ」
 冗談に決まっている。けど。
―――「こう見えても俺、なけなしの勇気ふり絞って誘ってんねんけど」
 そう言った九条の頬が、かすかに赤かった気がして。 

 こうなると、リビングを仕切るスライディングドアの向こう側、キングサイズのベッドがやたら存在感を増して来る。

「わ、私、そろそろ帰るね……」
 ぎこちなく立ち上がって、チェストに置いた荷物を取りにいく。そこで、ジュエリーが入っていた紙袋に気付いた。
「そうだ、これ、返さないと……」
 ネックレスを外そうと後ろに回した手に、何かが触れる。
「高辻にやる」
 それが、いつの間にか背後に立っていた九条の手だと気付くまで、少し時間が掛かった。
「今日付き合ってくれた礼や」
「え、でも……」
「その服も髪もめちゃくちゃ似合ってる」
「あ、ありがとう……」
 いつもとは違う声の雰囲気に戸惑いながら、どうにか礼を言う。

 ネックレスの金具を外した手の動きに合わせて、九条の手も離れて行く。ホッとしたのも束の間、後ろから包み込むように抱きしめられた。

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