ひとりぼっちの上司と私
しかし、直哉は遠慮するどころか急に目の色を変え、ずいっと顔を寄せてくる。なにかを期待する犬みたいな顔だ。
「もしかして九時からの予定って、ゆうメロ関連じゃない?」
「え……お、お前、なにを根拠にそんなこと……」
動揺するな。そう思えば思うほど、俺の目は泳いだ。
おまけに全身の血が顔に集まってくるのを感じる。
「ははっ。兄貴って照れるとすぐに耳まで赤くなるからわかりやすっ。もしかして、前に言ってた親切なプレイヤーといい感じとか?」
「うるさい。俺をからかいたいだけなら帰れ」
「いや、俺だって野暮じゃないから、そういうことなら大人しく帰るよ。邪魔してごめん。とりあえず、実家からの荷物は渡したから。じゃ、お幸せにね~」
ひとりで好き勝手に喋り倒した直哉は、去る時まで嵐のようだった。
まったく……なんなんだ。歌代社長といい直哉といい、最近の俺はあの自由気ままなクリエイターたちからおもちゃにされてばかりだ。
どっと疲れた気がしてため息を吐くと、俺は直哉から受け取った重たい荷物を軽く持ち直し、マンションの自動ドアをくぐった。