ひとりぼっちの上司と私
「ごめん、急に来て」
「……まったくだ。俺の帰りが遅かったらどうする気だったんだ」
つい、ため息交じりに苦言を呈してしまう。
直哉はあまり反省していない表情でぱちんと両手を合わせた。
「悪かったって。ほら、これ。実家からのお節介ギフト」
手に提げていた紙袋を、俺の鼻先につきつけて揺らす直哉。受け取って中を覗くと、レトルト食品や缶詰め、使い捨てカイロに、マスクまである」
「まるで防災用品だな」
「確かにね。兄貴んち、なにか食べるものある? なければ俺はこの中からなにか食べるし」
直哉は当然のように、うちで夕飯を食べるつもりのようだ。それくらいは別に構わないが、ゲームを始める前には帰ってもらわなければ。
「お前、どれくらい長居するつもりだ?」
「兄貴の心の広さ次第じゃない? 俺は明日午後出勤だから、のんびりできたらありがたいけど」
「……悪いが俺は心が狭い。九時までに帰ってくれ」
どうしても、今日の予定だけは譲れない。
直哉にもその切実さが伝わるよう、あえて冷ややかに言った。