ひとりぼっちの上司と私

 今週も疲れたー、と思いながら、会社のビルを出る。

 しかし、決して嫌な疲れではない。体は多少重いけれど、充実感で満たされた心は軽やかだ。

 たまにはひとりで飲みに行っちゃおうかな。いやむしろ、須田さんを誘ってみるとか……?

 彼はまだ仕事をしているだろうけれど、終わったら合流して飲みませんか? とか。

 ……いやいやいやいや。昨日の今日でそんな風に誘ったら、なにか勘違いしているみたいだ。

 悩みがあれば話していいと言われただけで、気軽にサシ飲みに誘うのは絶対違う。

 頭の中で盛大な独り言を繰り広げながら、いつも通り駅の方向へ足を進めようとしたのだけれど――。

「――莉々!」

 昨日とまったく同じトーンで私を呼び止める男性の声。

 まさか……。

 おそるおそる振り向くと、案の定そこにいたのは元カレの雄馬だった。私は不快感を隠しもせず、眉間に皺を寄せる。

「雄馬……。今日はいったいなんの用? 友達は?」
「そう邪険にするなって。今日は大事な話があって来たんだ。ここじゃ話しづらいから、喫茶店にでも入らないか?」

 どうしてそうへらへら笑っていられるんだろう。しかも、大事な話ってなに?

 昨日よりもさらに彼の行動が理解できず、苛立ちが募る。

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