ひとりぼっちの上司と私

「雄馬が後悔しようがしまいが、私たちのことはもう終わったことだよ。今はそれぞれ別の道を歩いているんだから、それでいいじゃない」
「俺はよくない」

 語気を強めた彼が、唐突に私の手首を掴んだ。

 振りほどこうとしてもびくともしない力の強さに恐怖を覚え、私の声が掠れる。

「ねえ、やめて。離してよ……」
「やっぱり莉々は地元に戻って、俺と結婚して子どもを産むのが一番幸せだと思う」

 どうして雄馬が私の将来を勝手に決めるのだろう。自分に都合のいいストーリーを押し付けているとしか思えない。

 私は……私の考える幸せは……。

「それは雄馬の一方的な希望でしょう? 私は帰るつもりなんてない。ようやく仕事が軌道に乗って、楽しくなってきたところなの」
「仕事って……子ども騙しのおもちゃを作ってるだけだろ」

 かちん、と頭にくる。

 だけど、雄馬は元々そういう考え方の人だった。ここで不毛な議論をしても、きっと無駄な努力に終わるだけだ。

「今さらあなたにわかってもらおうとは思わないよ。別れる時だって何度も似たようなことを言ってたもん。馬鹿にしたいなら好きなだけすればいい。だからもう、こっちのことは放っておいてよ……!」
「それができたらこんなところまで来てない。さっきから仕事の話はするけど、新しい男の話は出てこない。つまり今、フリーなんだよな? だったら俺とやり直したっていいはず――」

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