ひとりぼっちの上司と私

 その日は須田さんが営業先を回っていたため、展示会の情報についてのメールを受け取るのみで、具体的な話はできなかった。

 しかし、退社してからゆうメロの中で彼に会った。場所はいつもの波止場ではなく、ヤスダさんの個人的なスペースである、別荘の中だ。

 これまであまりインテリアにこだわりがなかったそうだが、最近『石』を材料にして家具を製作できる機能がリリースされたため、初心者の頃に集めた石を溜め込んでいた彼は、ここぞとばかりにインテリアに凝り出したそう。

 招かれた別荘の中は灰色一色で、椅子もテーブルもごつごつとした質感を残したままの野趣あふれる仕上がりだが、それはそれで味があった。

『社長から展示会の話を聞いた時、おみくじのガチャを引かされなかったか?』

 一度ゲーム中の電話を解禁してから、私たちはチャットで話すことを面倒に感じるようになった。

 画面上で文字のやり取りをするだけでも楽しいけれど、やっぱり、温度のある彼の声を聞ける方がうれしい。

 両手はコントローラーでふさがっているので、スピーカー機能を使っている。

「引きました。セキセイインコのやつ」
『俺はパンダだったな。【好きならば 白黒つけよう この関係】――と、まるで世間に後ろ指を差されるグレーな関係の相手がいるみたいな、微妙な格言を引いてしまった』

 心外そうな須田さんの声にクスクス笑ってしまう。

 あの瓶に入っているくおみくじって、結構バリエーションがあるんだな。

< 128 / 205 >

この作品をシェア

pagetop