ひとりぼっちの上司と私
『と、いうわけで。プライベートの話なんだが』
スマホの向こうから、やけにかしこまった声がした。続けて彼が軽く咳払いをする。
『加納、次の土曜か日曜、空いていないか?』
私は一瞬固まり、目をぱちくりさせる。遅れて動揺が襲ってきて、心臓が早鐘を打つ。
週末の予定を聞かれるって……まさかデートの誘い?
いや。でも。勝手に期待するのはまだ早い。
自分を落ち着かせようと試みるものの、逆にどんどん脈は早くなり、体温が上がっていく。
「ど、どちらもとくに予定はありませんが」
『じゃあ、天気がよさそうな日曜にしよう。俺と一緒に出かけないか?』
ほ、本当に誘われた。でも、一緒に出かけるって、ものすごく微妙な表現だ。
ゲーム仲間として、お友達のように誘われただけかもしれない。今、ゆうメロ関連のイベントとかなにかやっていたっけ?
そういうのに一緒に行こうとか、きっとそんなオチで――。
「あの、出かけるというのはどちらに……?」
『加納の行きたいところでいい。俺は東京には慣れているけど、お前はまだ行ってないところ、たくさんあるだろ?』
「ええとつまり、その……地方民の私を、社会科見学に連れて行ってくださる、的な?」
『お前、わざと惚けているのか? デートに誘ってるに決まってるだろ』